突然のコロナ禍に対し各国が足並みを揃えて急激な金融緩和に動いたことは、債券を一定量保有する機関投資家の運用に少なからぬインパクトをもたらした。期待利回りの低下や金利低下余地の縮小など、従前から指摘されていた債券運用の問題点は一層深刻化したが、他方で手厚い政策支援やワクチン普及による景気回復が見込まれる米国では長期金利の上昇が続いており、2021年も舵取りの難しい運用環境が継続しそうだ。
不確実性が高まり、安定的な運用がますます困難になったアフターコロナの世界で、債券投資の意義はどこに残されているのか。また、債券ポートフォリオはどのように扱われるべきだろうか。
本特集では債券分野に精通したアナリストや運用会社への取材をもとに、今後の債券投資のあり方を探っていく。
PART.1 コロナ禍が債券・クレジット市場に与えた影響を振り返る
予防的金融緩和の想定を超えた新型コロナウイルスの蔓延
弊誌が「利下げに舵を切る金融政策 債券投資の新たな航路を探る」と題する特集を企画したのは2019年9月号のこと。その後、予想外のコロナ禍を受けて利下げは一気に加速し、状況は一変してしまった。そこで、まずは2019年9月からコロナ禍に至るまで金利水準の動きを追ってみよう。
米連邦準備制度理事会(FRB)がFF金利の目標レンジを保険的・予防的な金融緩和として年2.25%~ 2.50%から25bp引き下げたのは2019年7月末のことで、ISM製造業景況指数が景気判断の分かれ目となる50を割り込んだことが1つのきっかけだった。FF金利はその後も9月と10月に25bpずつ段階的に引き下げられ、同年末には1.75%まで低下していた。
この間、日銀はリバーサルレート問題への配慮の必要からマイナス金利の深掘りを見送った。一方で欧州中央銀行(ECB)は、19年9月に預金ファシリティー金利を年-0.4%から-0.5%に引き下げている。各中央銀行は景気が減速局面に入ったと認識し、米欧中銀はすでに対策を講じ始めていたのだった。
新型コロナウイルスの感染拡大は、まさにそうした最中の出来事だった。
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