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米国プライベートクレジットの懸念が広がる中
オーストラリアの市場に注目すべき理由は

2026年7月21日

世界の投資家がプライベートクレジットへの傾斜を強めるなか、米欧に次ぐ第三の選択肢としてオーストラリアが存在感を増している。2023年のバーゼル導入を契機に銀行が一部の融資から後退し、その空白をノンバンクが埋める構造変化が進む同国のプライベートクレジット市場には、どのような投資機会があるのか。オーストラリアを拠点とするオルタナティブ運用会社Remaraのマネジング・パートナーのアンドリュー・マクヴェイ氏に、オーストラリア経済と市場構造の現状、そして今後の論点を聞いた。

オーストラリア経済の現状

──まず、足元のオーストラリア経済をどうご覧になっていますか。

成長とインフレは政府支出に牽引され、雇用は安定しています。足元では年内の利下げを見込んでおり、景気は今後12カ月横ばいで推移する可能性があります。オーストラリア経済は中国や資源輸出との結びつきが強いと見られがちですが、鉱物資源が経済に占める割合は約10%にすぎません。西オーストラリアやクイーンズランドなど資源比率の高い州も堅調で、資源・エネルギー輸出は減退していません。想像されるほど、中国経済への依存は大きくないのです。

──関税や地政学リスクが高まるなか、地域分散の観点からオーストラリアが注目されています。

オーストラリアは地理的に孤立していますが、経済的には世界とつながっています。東京まで10時間、ロンドンまで24時間と、周囲には大国が存在しません。力強い移民の流入、しっかりとした経済基盤、そして堅牢な法制度を備え、世界の混乱から切り離された西側先進国としての地盤があります。欧州や米国への投資で意識せざるを得ない地政学リスクから自由である点は、大きな意義だと考えています。

プライベートクレジット市場の構造

──プライベートクレジット市場の規模と、銀行の後退について教えてください。

オーストラリアの総信用残高は約355兆円、うちプライベートが約55兆円を占めます。2023年初頭のバーゼル導入で一部融資のリスクウェイトが引き上げられ、伝統的融資における銀行のROE(自己資本利益率)が低下しました。その結果、銀行はプロジェクトファイナンスや不動産から後退し、運用会社が最終的な借り手へ信用を供与する好機が生まれています。足元では自動車ローンや住宅ローンなど、より小口で粒度の細かい領域へとプライベートな融資の機会拡大してます。 

──米欧の市場と比べた特徴はどこにありますか。

最大の違いは担保の性質です。米国はキャッシュフローを対象とする融資が中心ですが、オーストラリアは現物資産による担保を有しているローンが中心です。プライベートエクイティ(PE)スポンサー付きの企業向け融資は限定的で、ソフトウェアへのエクスポージャーも低い。オーストラリアのクレジット市場は、物理的担保の上に築かれた市場なのです。

クレジットサイクルと今後の展望

──米プライベートクレジット市場への懸念が報じられていますが、どう受け止めていますか。また、オーストラリア市場で注視すべき点はどこにありますか。

米国の課題は構造的なものです。資産と流動性の間にミスマッチがあり、資金流入に見合う資産が伴っていないと見ています。米国のプライベートクレジットの多くは、まず資本を集め、後から投資対象を探す「トップダウン型」だからです。オーストラリア市場も資本調達の面では似ていますが、現物資産の裏付けに依存する点が異なります。当社の場合は、組成したいクレジットを特定してから資本を充てる「ボトムアップ型」をとっています。豪市場で注視すべきは不動産とプロジェクトファイナンスで、大型案件は当面横ばいが見込まれ、これらに偏っている場合には注意が必要です。半面、消費者向け住宅ローンや、確立した中小企業向けは相対的に堅調です。

──今後の市場の展望と、日本の投資家にとってのメリットはどこにあるお考えですか。

先述した構造変化が進み、プライベートクレジットファンドとノンバンクの貸し手が増える一方、銀行融資は減少していくでしょう。規制や透明性の改善も見られており、今後も投資妙味は高まっていくと予測します。

すでに米欧のプライベートクレジットに投資している投資家にとっては、地域分散の一手となり得ます。これも先述の通り、オーストラリアは移民による人口増を背景に相対的に底堅い経済を保ち、欧米投資で意識される地政学リスクからも距離があります。資産面では企業のキャッシュフローよりも現物資産の裏付けに比重があり、粒度の細かいエクスポージャーを取りやすいです。日本の投資家は分散とインカムを重視する点で欧州の投資家と近く、この資産クラスとの親和性は高いと見ています。

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Remara マネジング・パートナー アンドリュー・マクヴェイ 氏