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米国経済 Deep Insight 第18回 
米インフレを見極める3つのポイント

ニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が解説
2026年8月7日
窪谷 浩 /  ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

当シリーズでは、ニッセイ基礎研究所の経済研究部で主任研究員を務める窪谷浩氏が、米国の社会・経済の先行きを考える上で欠かすことのできないイベント、ニュースや経済指標をピックアップ。さまざまな切り口から分析・解説していく。


米国では6月の消費者物価指数(CPI)が前年比で総合指数、コア指数ともに4ヵ月ぶりに伸びが鈍化し、市場ではインフレの落ち着きを期待する見方も広がった(図表1)。しかし、総合指数の鈍化はエネルギー価格の下落による影響が大きく、単月の結果だけで今後の物価動向を楽観視するのは時期尚早である。実際、7月に入ると米国とイランの戦闘再開を受けて中東情勢が再び緊迫し、原油価格やガソリン価格は上昇に転じた。このため、7月のCPIはエネルギー価格を主因として前年比の伸びが再び加速する可能性がある。

 

もっとも、今後のインフレ動向を見極めるうえでは、7月のCPIを押し上げるとみられるエネルギー価格だけをみていれば十分というわけではない。先行きを見通すうえでは、中東情勢とエネルギー価格、関税、AI関連投資の3つが重要なポイントになる(図表2)。


第一に、中東情勢とエネルギー価格である。足元では中東情勢が再び緊迫しており、今後の情勢次第では原油価格が一段と上昇する可能性もある。エネルギー価格は総合CPIを直接押し上げるだけでなく、輸送費や企業の投入コストを通じて幅広い財・サービス価格へ波及する可能性がある。米国ではガソリン価格の変動が比較的短期間で消費者物価へ反映されることから、中東情勢の行方は今後数ヵ月のインフレ率を左右する重要なポイントとなろう。

第二に、関税である。昨年実施された大幅な関税引き上げによるインフレ率の押し上げ効果は、導入から時間が経過したほか、対中関税率の引き下げや適用除外の拡大によって実効関税率が昨春をピークに低下していることから、概ねピークアウトしつつあるとみられる。しかし、今後、実効関税率をさらに引き上げるような新たな関税措置が導入されれば、企業による追加的な価格転嫁を通じて再びインフレ押し上げ要因となる可能性がある。

第三に、AI関連投資である。生成AIの普及を背景に、データセンターや電力インフラを中心とした設備投資は拡大が続いている。短期的には建設資材や半導体・IT機器、電力需要の増加などを通じて一部価格を押し上げる可能性がある一方、中長期的には生産性向上によるコスト削減を通じてインフレ圧力を和らげる効果も期待される。短期的なインフレ要因と中長期的なディスインフレ要因が併存している点は、今回のAI投資局面の特徴であり、そのバランスをどのように評価するかも重要な論点となろう。

7月のFOMC会合では、政策金利を3.503.75%で据え置くことが決定された。一方、3人の参加者が0.25%の利上げを主張して反対票を投じるなど、委員会内でインフレへの強い警戒感が示された。FRBはエネルギー価格や関税、AI関連投資が物価へ及ぼす影響を慎重に見極める姿勢を維持している。先行きの不確実性は依然として高く、今後の金融政策を展望するうえでも三つの要因の動向が重要な判断材料となろう。

窪谷 浩

 ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員