自社の企業年金はどれほど従業員に評価されているのか――。このような悩みを抱える多くの企業年金担当者に朗報だ。このほど発表された実証分析※により、分析対象となった数ある福利厚生制度の中でもっとも「従業員満足」を高める効果があるのは企業年金制度であることが示された。実証分析を行った高田短期大学の江淵剛助教に、研究の背景や結果、分析内容について聞いた。
※年金研究 No.22に掲載された論文「企業年金が従業員の意欲・意識に与える影響について- 人的資本管理の視点から -」。論文は下記リンクからダウンロード可能です。
NKEN22_55
高田短期大学 助教
江淵 剛氏
――これまでのご経歴をお聞かせください。
現在は、所得保障機能のひとつとして、企業年金を主な研究テーマとしています。企業年金制度の運営者側というよりも従業員の立場から分析しているのが特徴で、具体的には「従業員の意識や考え方に企業年金がもたらす影響」を研究テーマとしています。
――最近では「企業年金が従業員の意欲・意識に与える影響について~人的資本管理の視点から~」という論文を発表されました。研究のきっかけや結果について教えてください。
きっかけは人的資本管理に対する関心の高まりです。経済産業省が2020年に取りまとめた「人材版伊藤レポート」などを契機に、近年は多くの国内企業が従業員の意識や行動に着目し「従業員満足」や「従業員エンゲージメント」をいかにして高めるか考えるようになりました。従業員満足を高めるための有力な施策として福利厚生制度が挙げられますが、企業年金や健康保険、退職給付などそれぞれの制度を切り出して有効性を検証した事例は多くありません。そこで今回、企業年金にフォーカスした研究をしてみようと思い立ったのです。
結果としては、企業年金が従業員満足向上に大きく貢献していることが示されました。
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