先進各国のインフレ高進が一服し、市場の関心はFRBによる利下げに移っている。対する日銀は、金融緩和を維持しつつもイールドカーブ・コントロール(YCC)修正をはじめ政策正常化に向けた準備を進めているかのように見え、世界と日本の金融政策の方向性の違いがこれまで以上に明白となっている状況だ。世界と逆行する日本の金融政策は市場や経済にどのような影響をもたらすのか、そこからどんな投資機会が生まれるのかなど、投資家にとって気がかりなポイントは枚挙にいとまがない。そこで世界10カ国に拠点を構える債券運用大手・ピムコの日本拠点でエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務める覚知禎氏に、2024年の国内外の市場見通しや日銀の動向について語ってもらった。
前編では、グローバルな経済・マーケットを巡る近況と今後の展望について取り上げる。
ピムコジャパンリミテッド
エグゼクティブ・バイス・プレジデント
覚知 禎 氏
欧州諸国やカナダ、オーストラリアなど経済活動がスローダウンした国もありますが、グローバル経済としては市場の想定よりもかなり堅調だったと思います。かつて低位にとどまっていた各国の政策金利が2022年度に急上昇したことを受け、23年度からは少しずつ景気後退へと向かうとの見通しが大多数だったと思いますが、一定の経済活動がキープされた印象です。
背景としては、グローバル全体で需要の根強い状況が続いていた点が挙げられるかと思います。例えば米国では、新型コロナ対策の現金給付により家計に蓄えられていた「強制貯蓄」が、消費を下支えしました。また米国経済のストラクチャーの特徴として、金利上昇の影響が家計や企業に及ぶまで時間がかかるようになっているため、政策金利の引き上げが企業や家計の経済活動に直撃しなかったのもプラス要因となりました。
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