大胆な金融緩和から脱却する「金融政策正常化」に現実味が帯びてきた。日本銀行はこれまで経済全体への影響を懸念して慎重姿勢をとってきたが、足元の物価上昇や景気回復を受けて正常化への出口を本格的に模索し始めている。果たして正常化は実現するのか。日銀の動向や世界の経済状況を踏まえ、日本銀行在籍時には政策委員会審議委員スタッフも務めた楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストが解説した。
※本記事は2024年1月19日開催の「オルイン新春セミナーin名古屋」での基調講演「『巧遅は拙速に如かず』が示す日銀の宿痾~金融政策と政治、揺れ動く2024年を展望する~」の内容をもとに採録しました。
金融緩和の出口を模索中
日本銀行はいよいよマイナス金利解除を始めとする金融政策正常化を本格化させる見通しです。2023年11月ごろからマイナス金利解除を念頭においた情報発信を繰り返しており、「出口をいい結果につなげることは十分可能」(氷見野副総裁、12月6日)、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」(植田総裁、12月7日)と正常化に向かう可能性を正面から語っています。さらに12月の金融政策決定会合における主な意見では、一連の政策修正について「巧遅は拙速に如かず」、つまり「早急に着手すべき」という趣旨の記述があり、すでに正常化の具体的な出口を模索していることがうかがえます。
元日に発生した能登半島地震により今は政策修正に動けない状況ですが、私は3か4月にも日銀はマイナス金利政策を解除すると見ています。そして、2~3年かけて長期金利は上昇していくでしょう。その際日銀は、1998年12月の「運用部ショック」や2003年6月の「VARショック」のような金利ショックが発生しないよう注意を払うと思います。