「オルタナティブデータ」と呼ばれる非伝統的な情報を用いた資産運用の最新動向について、認知拡大や業界ルール整備などの活動を展開する、オルタナティブデータ推進協議会(JADAA)関係者によるリレーコラム。
今回はコロナ後の経済正常化で注目が集まっている訪日旅行者の動向を分析しているVpon JAPANの広報担当、松崎久季氏に寄稿いただいた。
第15回「オルタナティブデータとしての気象データの可能性」はこちら。
Vpon JAPAN は、 2008 年に台湾で創業したVpon ビッグデータグループ(Vpon) の日本法人です。
Vponはアジアのビッグデータを大量に保有しており、2つのデータ・A I プロダクトを提供しています。また、クロスボーダーにおける位置情報 、スマートフォン上の利用アプリ・閲覧サイト・端末言語、購買(レシート)情報をはじめとした弊社オリジナルデータに加え、パートナーが保有するサードパーティーデータを最大限に利活用するデータソリューションを提供しています。そして、訪日旅行者を Vpon独自のソリューションで可視化するダッシュボードがあり、移動の流れを追うことも可能です。Vponはアジアからグローバルなデータカンパニーとして成長していくことを目指しています。
そして、昨年11月にクールジャパン戦略をデータの力でより一層盛り上げ、日本の経済発展に寄与することを目的として開催された「クールジャパンデータ&デジマケ祭り」ではVponが事務局を担当。このイベントでは日本政府が掲げるクールジャパン戦略をデータ文脈で推進し、官民を挙げて、縦割り組織を横断的なOne Teamで取り組む重要性を広くアピールしました。また、金融業界においても、フィンテック企業やネット銀行の登場により金融サービスの競争が激化する中で、Vponのデータ利活用が進んでいます。そこでVponでは、従来の金融機関もスタートアップ企業も、ともに競争力を維持できるようなソリューションを提供しています。
コロナ禍を経て再び注目集まるインバウンド
周知の通り、日本では2022年10月11日以降、新型コロナウイルス感染症の水際対策が大幅に緩和され、入国者数の上限が撤廃されました。マスクの着用も今年3月13日からは個人の判断に委ねられ、5月8日からは感染症法上の位置づけが「第5類」に移行するなど、徐々にコロナ禍前の生活に戻っているような感覚で何だか少しホッとします。今まで当たり前だと思っていた日常が当たり前ではなかったのだと感じ、そして、ささやかな日常を取り戻したいと願う数年でした。
10月の入国者数上限廃止以降、個人旅行者の入国も約2年半ぶりに解禁されています。制限は実質的にほぼコロナ禍前の状態に戻っており、また為替の円安進行の効果もあって、訪日外国人が増加しています。訪日者数に制限(※3/13時点)がある中国からの旅行者の回復はまだまだこれからだと言えるでしょうが、街中や利用する交通機関、弊社がオフィスを構える新宿の駅周辺には訪日外国人と思われる方たちがたくさんいて、日本観光を満喫しているように感じます。率直に嬉しい光景です。しかし、訪日外国人の数は2022年10月の約50万人から11月は93万人と、水際対策の緩和によって1カ月間で約2倍の伸びとなりましたが、コロナ前の2019年の11月と比べると依然、4割ほどにとどまっています(図)。
※日本政府観光局 JNTO 12月21日プレスリリースより引用
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/20221221_monthly.pdf
このことからも、訪日観光客の本格回復はまだまだこれからといえるでしょう。そして、2023年はインバウンドの数字が日本の経済発展における重要な鍵になると考えられます。インバウンドを復活させ、日本の経済発展を目的とする一方で、日本の文化・伝統・食・酒・技術など、まだまだたくさんあるクールジャパンをもっと知ってほしいと願っています。
特に、日本の優れた「モノ」への関心もさることながら、コロナ禍を経てより一層、観光で重視されるようになったのは、現地に足を運ばなければ体験できない「コト」であると思えます。日本には四季があり、各季節でしか味わえないことがたくさんあります。私もつい先日、世界遺産となっている流氷を見に、北海道知床を訪れてきました。流氷を見ながら日本文化である温泉に入り、冬の自然を体感するというとてもぜいたくな旅でした。そして、まだまだ知らない日本の素敵な「モノ」や「コト」がたくさんあると実感した旅でもありました。
そこでインバウンド完全復活に向け、先を見据えたインバウンドプロモーションの施策が必要となり、インバウンドの最新動向や消費行動の把握とともに日本に確実に来てもらう認知・訴求が重要だと考えています。ポイントの1つとなるのは、「データ戦略」を構築すること。データを活用してデジタルマーケティング、観光DXを強化し、的確にアプローチを行うことが間違いなく求められます。
インバウンド施策とデータの関係
データを活用したインバウンド誘客の強化にはどういった施策があるのでしょうか。Vpon独自のソリューションを交えながら、観光DXの事例についてご紹介したいと思います。
Vponではターゲットの把握から効果検証まで一気通貫のインバウンドマーケティングを提供しています。そして、「ターゲットの把握」では携帯電話の位置情報を用いた訪日旅行者の滞在分析や移動分析、アンケート調査データを用いたペルソナ分析やスポット分析など、ターゲットとなる訪日旅行者を把握するためのさまざまな分析を可能としています。広告配信後の効果測定においても「訪日検証マップ」という独自ソリューションを提供しており、インバウンドマーケティングでは難しいとされる、広告効果を可視化することも可能となっています。
下の図は新潟県が訪日旅行者の検証を行った事例です。香港-新潟間の直行便の就航にあたり、香港人向けに利用促進のための広告出稿を行った際、広告接触者の実際の訪日結果を把握したいということで訪日検証マップを利用いただきました。
上記の通り、広域での検証及び特定スポットにおける検証などさまざまな切り口で広告接触者を分析しました。訪日旅行者が足を運んだスポットを可視化することにより、効果のあった訴求、改善が必要な訴求をそれぞれ把握できたため、新潟県からも次の施策に活かすことができる検証結果として喜んでいただきました。
観光DXを最大限に活用し、このような形で最新動向を的確に分析することで、より多くのターゲットとなる訪日旅行者の心を掴み、日本への観光誘致が拡大するものと期待しています。
最後に
観光需要が回復傾向に向かい、アフターコロナの起死回生に日々、勢力的に取り組んでいる関係者の方は多いと思います。そして、各地域が抱える課題や描く未来像はさまざまだと思います。そんな中、観光DXを活用し新しいコンテンツに迅速に対応していくことも簡単ではないでしょう。しかし、観光立国を確立する上でデータ活用への抵抗も併せて克服していく必要もあると、ささやかながら私からも伝えていければと思います。
「観光DXとは、観光産業にデジタル技術で変革を起こすこと。そのゴールは、観光消費機会の拡大と観光産業の生産性向上である」これは弊社代表・篠原好孝の持論でもあります。
「稼ぐ力」を日本全体で高め、観光産業、日本経済ともに豊かになる未来を創造し、データで新しい領地を切り開いていきましょう。
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