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退職給付制度ホットトピックス
サステナブルな企業年金制度を見すえた最新トレンド

DCウェーブ&オルインWeb 共同企画
2021年9月28日

定年延長や雇用形態の柔軟化など、働き方の多様化が模索される中で、退職給付制度にも時代に即した変化が迫られている。2022年度より施行される「年金制度改正法」はそうした流れを受けた制度面の改革の一環といえる。さらに昨今、企業型DCの分野でもガバナンス強化をめぐる動きも顕著になってきた。そこで本企画では、企業年金の制度設計コンサルタントであり年金数理人でもあるJPアクチュアリーコンサルティングの代表取締役、黒田英樹氏に企業年金制度、とりわけ企業型DCの最新潮流やトレンドを解説していただいた。

退職給付制度の注目トピック

――はじめに、企業年金の関係者が知っておくべき制度面の主な変更ポイントについて教えてください。

①DCの加入対象年齢の引き上げ、②企業型DCの加入者の誰もがiDeCoに加入できるようになったこと、そして③企業型DCの拠出限度額の見直し、いわゆる「2024年問題」です。1つひとつ注目点を見ていきましょう。

【DCの加入対象年齢引き上げ】

「人生100年時代」を迎えたと言われる中、多様な生き方や働き方が想定されるようになったことが今回の改正法施行の背景にありますが、公的年金改革とあわせて私的年金である企業年金においても制度改正が行われました。その代表的なものがDCの加入対象年齢の引き上げです。

企業型DCの加入可能年齢に関して、従来厚生年金被保険者のうち65歳未満とされていたものが、厚生年金被保険者に拡大され、70歳未満まで加入することが可能になりました。近年、60歳以上の従業員を雇用するケースが増えている一方で、60歳の定年以降は再雇用の形態をとり、DBもDCも加入対象外とするケースが一般的ですが、定年延長を行いDBあるいはDCに加入させることとなった場合は、DBについては減額変更の問題が解消されていませんので、DCの方が活用しやすいのではないでしょうか。

ただし新型コロナウイルスの感染拡大以降、企業の間では定年延長の動きが止まっているのが実態です。コロナ禍による生活スタイルのさまざまな変化がプラスにはたらきビジネスが急拡大し、人材不足で切羽詰まっている業界を除けば、積極的に定年延長を実施している企業は多くないようです。

JPアクチュアリーコンサルティング
代表取締役 黒田 英樹 氏

【誰でもiDeCoに加入可能に】

今回の改正法の目玉の一つに挙げられているのが、企業型DC加入者のiDeCoへの加入要件が緩和され、個人の選択によって「誰でもiDeCoに入れるようになった」という点です。これまで、企業型DCの加入者がiDeCoにも入りたい場合には、各企業の規約の中にiDeCoへの加入を認めることを盛り込むことが必要でした。

さらに事業主掛金の上限を月額5.5万円から3.5万円に引き下げた企業の従業員しか加入できないという制約も存在したため、事業主掛金の高い従業員が存在する企業の場合は、仮に事業主掛金の低い従業員で拠出可能額の上限に達していない場合でも、iDeCoに加入することが事実上不可能な状態でした。

それが2022年10月以降、企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金を合算して管理することが可能になったため、月額2万円を上限に、iDeCoの掛金を拠出できるようになります。(加入要件緩和後のイメージは図1参照)

――事業主掛金の低い加入者でも公平にiDeCoのメリットを活用できるようになるわけですね。ここで企業側が注意すべきことは何かありますか?

企業型DCで加入者掛金を実施している場合、個人単位で加入者掛金とiDeCoのいずれかを選択することになります。事業主掛金が低い場合iDeCoの方が有利になりますが、企業がこうした説明をしない限り活用されない可能性もあります。また、①で触れた加入対象年齢の引き上げにも関連する問題ですが、受給時の注意点をあらかじめ従業員に周知しておく必要があります。

たとえば、63歳の従業員で、60歳の定年時にDCもDBも除外となり、厚生年金保険に入っている人が、法改正によってiDeCoに加入する、あるいは転職して企業型DCに加入するといったケースも考えられます。もし今年60歳で定年を迎える場合、企業型DCで受給を始めてしまうかもしれないし、受給開始を繰り下げて、据え置いているかもしれません。一旦、企業型DCの受給者になると企業型DCには加入できない、といったルールもありますので、企業は今の段階から案内しておく必要があります。

【2024年問題】

――続いて、「2024年問題」とは何でしょうか?

現状、企業型DCのみに加入している場合の拠出限度額は月額5.5万円ですが、DBなど他の制度にも加入している場合、他制度の給付水準や掛金水準にかかわらず、一律で2.75万円とされています。そのため、「DBの制度を持っている会社の拠出限度額が3一律で半分になるのはいかがなものか」「ひいては、DBの実施が不利となりDBの衰退につながるのではないか」といった声もありました。

実際、DBとDCの両方の制度を持っている企業にとっては、大企業以外はDBの掛金が平均で1万円程度と言われているにもかかわらず、一律で2.75万円分を使っているカウントになるため、税制面の不公平感を指摘する向きもありました。そうした要望を厚生労働省が反映して2024年12月から改定されることとなったのです(図2)。

―― 一見すると不公平感も払拭される良い制度改定のようですが……。「2024年問題」と言われているくらいですから、問題点もあるのでしょうか。

DBの掛金水準が相対的に高い企業にとっては、改悪と言えます。

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