ポートフォリオ分散の促進や高く安定した収益の獲得等を目的に、世界的に投資が拡大してきたプライベートアセットは、新型コロナウィルス(COVID-19)に起因する経済環境の混乱・悪化にどのような影響を受けたのだろうか。本稿では、プライベートエクイティ、プライベートデット、不動産、インフラといった主なプライベートアセットを対象に、足もとまでのパフォーマンス動向や市場環境を概観するとともに今後の投資家動向を考察する。
プライベートアセットファンドは、株式や社債等の伝統的資産と同様にCOVID-19の影響を受けた直後のパフォーマンスは悪化したものの、2020年1-3月もしくは4-6月を底にしてファンド全体のパフォーマンスはプラスに戻してきている。一方で、COVID-19により、外国人の入国制限や国内の外出制限等の封鎖措置が直接的に影響する「旅行、レジャー、外食、運輸関連等」のセクターは引き続き市場環境は芳しくなく、その他セクターを中心にパフォーマンスを牽引するK字型の回復となっている点には留意したい。
投資家動向についても引き続き投資拡大が見込まれる。オルタナティブ専門の調査機関が、COVID-19のパンデミック後に実施した長期的な配分計画に関する投資家アンケート調査によれば、どのアセットクラスも「増やす」と回答した割合が「減らす」と回答した割合を上回った。パンデミック前の同調査と比較しても「増やす」とした回答が増加しており、投資が加速する可能性も示唆される。パフォーマンスが一時的に悪化したものの、戻してきていること、戦略によっては優良な新規投資機会が見込まれることを背景に、プライベートアセットは投資家の需要をより強く引き付けていることがうかがえる。
ただし、具体的な投資行動には留意が必要である。現在もパンデミックは終息しておらず、K字型の回復が続くなか、個別ファンドのパフォーマンス差異は広がっている。こうした環境では、運用者にとってはスキルが試される一方で、最終投資家はその巧拙を見極められないと期待するリターンが享受できない可能性が高まっている。ファンド選定においては、パフォーマンスやポートフォリオの状況だけでなく、先々の投資・回収の進捗・モニタリング等のリスク管理も踏まえた、運用者による投資戦略の遂行力を適切に見極めることがこれまで以上に求められよう。
※本記事はオル・インvol.60に掲載されたコンサルタント・オピニオンからの転載です。
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