昨今、国内株式を投資対象とした集中投資運用が話題となっている。この数年多くの媒体で紹介され、すでに投資している、あるいは、関心を持っている投資家も多いだろう。本稿では運用商品評価に関わる立場から、集中投資に求められる要件を紹介したい。
国内株式の集中投資運用は、クオリティ重視を標榜するものが多い。各運用者でクオリティの定義は異なり、投資先企業のバランス・シートの強さ、利益率の高さ、業績の安定度合い、表面上の財務に現れない事業価値、経営者の質等、重視する指標や観点は多岐にわたる。銘柄選択のアプローチも、過去の実績を見て、財務指標が優れている銘柄を定量的にスクリーニングし、それが持続可能かどうかを分析して、銘柄選択を行う運用者も散見される。
そのような手法を否定するものではないが、3,000以上ある日本の上場企業の中から50未満という限られた銘柄に厳選する運用ならば、どのような企業に投資したいかという、運用者の思想、哲学が明確であるべきだと考えている。投資したい企業の定義付けがはっきりしていて、どのようなパフォーマンス特性を投資家に提供したいのか、筋道を立てて練り上げられた運用においては、銘柄選択についても強いこだわりが見られ、その着眼点にブレがない。必然的に投資に値する銘柄は絞られ、結果として長期投資になる。保有銘柄をモニタリングする視点にも一貫性が期待できる。運用者が集中投資を始めるに至った経緯から詳しく確認し、その結果たどり着いた運用哲学に納得感を持つことができるかが重要であろう。
日本の上場企業に「高クオリティ銘柄」は多いわけでなく、運用者のアプローチが違っても重複して保有される銘柄は少なくない。それでも、投資した理由を確認すると、その深みには自ずと差が出る。いかに高クオリティ企業といえども短期的に業績が悪化することはあり、こうした局面での投資行動にも違いが表れる。その結果、パフォーマンスにも差が付く。
集中投資は市場に対して大きなアクティブ・リスクを取ることを許容し、長期で良好なリターンの獲得を目指す運用である。そのような運用を採用するのであれば、運用者の確固たるこだわりに沿った、企図する運用特性の実現可能性が高い商品を選ぶことが、納得できる結果をもたらすと考えている。
※本記事はオル・インvol.60に掲載されたコンサルタント・オピニオンからの転載です。
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