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3.解約コストが上昇するケースには要注意
運用収益の積極還元など一般勘定の商品性改善が打ち出される一方、保険契約解約時にかかるコスト(解約控除率)が上昇している点には注意が必要だ。
解約コストは各社によって算定の対象となる国債の年限(10年・20年)や国債応募者利回りの平均値の期間(5年・10年)、控除率の上限等が異なっている。各社とも共通するのは、解約月の10年・20年の応募者利回りが過去5年・10年の応募者利回り平均値より大きいほどコストが上昇する点である。すなわち概して言えば、金利上昇局面では解約コストが発生するのみならず、その上昇幅が大きいほど解約控除率は高くなる。本邦金利水準の先行きを上昇傾向と読むのであれば、解約コストは上昇基調を辿ると理解しておく必要があろう。
筆者の試算によれば、コロナショック後の2020年度から再び解約控除が発生するようになったが、足下2025年3月時点では5%近くに達する結果となっている(図表3・Ⅰ参照)。また、日本生命一般勘定プラスの解約控除を試算すると、仮に2022年4月の受託開始時に契約した場合、足下2025年3月時点では9%近くに達する結果となった(図表3・Ⅱ参照)。なお、算定の対象期間が短い故に、解約控除率が足下の金利に大きく左右される点には特に留意したい。
4.「金利ある世界」と生保一般勘定
以上のように、最近発表された日本生命の商品改定により、主要生保における一般勘定商品に対する取り組みが各社ごとに異なることが鮮明になりつつある。過去を振り返ると、長らく続いた低金利期において、生保一般勘定は企業年金にとって最低保証付きのインカム商品として魅力があったのは間違いない。特に、マイナス期を含めて債券インデックスが低水準で推移してきたなかでは、期待運用収益率を一般勘定の予定利率として最適化を図ると、企業年金資産ポートフォリオの一定割合を占めるなど少なからぬ役割を果たしてきたのは事実だろう。対して生命保険側の視点からは、少なからぬ財務的負担になっていたことも否めず、新ソルベンシー規制の導入を契機に保証部分の圧縮、つまり(固定)予定利率の引き下げは不可避の流れだったのかもしれない。
しかし、ここ数年前からの世界的な金利上昇圧力、さらには本邦金利水準の引き上げ傾向など所謂「金利ある世界」を見据えることが可能になったことは、不可避の流れを変える可能性を大いに秘めている。資産運用面における全体のインカム収益確保や時価による負債評価は、スポットレートの上昇で財務的な余裕がより大きくなることを期待できるためだ。要するに、保証利率として一定の収益を約束した上で、追加的に配当を分配する一般勘定の魅力は、金利上昇を前提とすれば相対的に高まると言えるのではないか。もちろん、生保各社の財務状況に依存するので一概に判断できないが、少なくとも従前よりも「攻めの運用商品」としての性格が強まる可能性を十分に吟味しては如何だろうか。
※当記事は、大和ファンド・コンサルティングが発信しているレポート「コンサルタントの眼」から抜粋したものです。同社の公開済みレポートのサマリーやディスクレーマーは下記リンクから閲覧できます。(大和ファンド・コンサルティングのページへ遷移します。)
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