連載 小倉邦彦の資産運用時事コラム第12回 ビハインド・ザ・カーブに陥ったFRBが利上げの遅れを検証~テイラー・ルールが利上げのベンチマークとして復活?
2024年3月25日
1.新型コロナ後の高インフレ下におけるFRBの主要政策措置の流れ
今回の利上げサイクルではインフレの高騰が一時的との判断で、利上げ開始が遅れたことにより、インフレの上昇に対して利上げが遅れるビハインド・ザ・カーブに陥り、結果として急速で長期にわたる政策金利の引き上げを迫られたのではないかとの見方が強い。
FRBは本年2月14日に「新型コロナ収束後の高インフレ下におけるFRBの対応について(The Federal Reserve’s responses to the post-Covid period of high inflation)」と題するFEDS Notesを公表し、その対応を自ら分析した。執筆者はウォラー理事とProgram Direction Sectionのイーリグ上級顧問である。ウォラー理事は元セントルイス連銀副総裁で経済学者、今回の利上げサイクルでは一貫して大幅利上げの必要性を主張してきた超タカとして有名であるが、昨年11月にはテイラー・ルールにも言及しながら政策が十分な金融引き締め圏に達したと述べ、FOMCメンバーの中でも真っ先に利下げの可能性を示唆した人物である。今回のFEDS Notesは利上げ局面における政策判断の検証になるが、適正な政策金利の水準を把握するための有用なベンチマークとしてテイラー・ルールに言及しているのが特徴である。
FEDS Notesの中身を議論する前にまずは今回の利上げサイクルにおいて、FRBが採った主要な政策措置をFEDS Notesを基に振り返ってみたい。