2022年から続いた世界的な物価上昇にようやく落ち着きがみられてきたが、今後の世界経済はどのような道筋を辿っていくだろうか。また、それによって日本銀行の金融政策はどのように展望できるだろうか。野村総合研究所でエグゼクティブ・エコノミストを務める木内登英氏に予測を語ってもらった。
第2弾となる今回は、金融市場で期待が高まっている今年4月のマイナス金利解除について、実現性に疑問を投げかける。※本記事は2023年12月7日開催の「オルイン機関投資家フォーラム」でのセッション「日銀金融政策の評価と今後の展望」の内容をもとに採録しました。
インフレ率はすでにピーク
日銀の目指す「賃金・物価の好循環」は起こらない
日銀は生計費の上昇が賃上げ圧力を生むとする「物価・賃金の好循環」を金融政策の重要キーワードとして掲げていますが、私には違和感があります。というのも、物価と賃金は簡単に相乗的に上がっていくものではないからです。物価・賃金の名目値を高い水準で維持するには経済そのものを強くする必要がありますし、底流には「経済が成長する力」「企業が稼ぐ力」などの実質的な改善が欠かせません。
そもそも、物価・賃金の好循環を実現するための大前提である国内の物価上昇率はピークに達しつつあります。世界的にインフレ率下がっていく見通し(「➀世界の物価動向と米中経済のリスク」参照:https://al-in.jp/13719/)となっており、日本も例外ではないからです。実際、2023年11月の東京都区部消費者物価指数はかなり下振れました。電力やガソリンといったエネルギー価格が落ち着いてきたことに加え、物価を大きく押し上げていた食料品価格の値上げの動きに急速にブレーキがかかってきたことが背景にあるでしょう。また、2024年初頭には消費者物価指数の伸び率が2%強まで下がり、23年初頭(4.2%)から1年間でほぼ半分に急低下する見込みです。
物価上昇が落ち着いたからといってすぐに国内の景気が悪くなるような事態にはならないでしょうが、すでに経済見通しに慎重な見方が出ている米国や欧州の影響が徐々に出てくることは避けられないでしょう。
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