前編ではヘッジファンドのようにショートポジションやレバレッジを活用し、従来の伝統的な投資手法(ロングオンリー)とは異なるオルタナティブ投資を説明したので、後編では不動産、インフラのように従来の伝統的資産(株式・債券)とは異なる投資対象としてのオルタナティブ投資を説明していきたい。これらはアセット型オルタナティブとも呼ばれているが、主な投資対象は現物資産としての不動産、インフラ、ノンバンク融資であるプライベートデット(以下PD)、それに未公開企業への投資となるプライベートエクイティ(以下PE)の4つである。なお、現物資産では農地・森林などへの投資も存在する。
アセット型オルタナティブの特徴は、上場株式や債券のようにパブリック市場で取引される伝統4資産とは異なり、未公開のプライベート市場での取引であるということと、流動性が低いということである。インフラ投資の場合オープンエンド型のファンドであっても、ファンドが保有するインフラ資産に流動性があるわけではないので、ファンドの流動性は限定的になる。また、未公開企業に投資を行い、時間をかけて当該企業のバリューアップを図り、数年後に売却して大きなキャピタルゲインを得るようなPEファンドでは、ファンドを途中解約不能のクローズドエンド型にすることが多く、ファンドの構造上流動性が極めて制限されるということになる。従って、アセット型オルタナティブはしばしば低流動性資産とかプライベートアセット(以下PA)投資とも呼ばれている。
市場が不安定化する中で伝統4資産の期待リターンは長期的には低下傾向にあり、株式と債券の相関関係が不安定化する中では、伝統4資産との相関が相対的に低く、安定したインカムを稼ぐインカム系のインフラ、不動産、PDや上場株式を上回るリターンを稼ぎ、収益ドライバーとなるPEは、年金の運用資産において中核をなす存在になりつつある。また、その資産・負債構造からある程度流動性を犠牲にすることができ、長期投資が可能な年金基金にとっては、長期投資で流動性を犠牲にすることにより高い流動性プレミアムを享受できる低流動のPA投資は、もともと年金とは相性がよい資産クラスである。
一方で、PA投資は流動性以外にも数多くのリスクを内包している点は留意が必要である。市場に起因するリスク以外はマネジャーがうまくコントロールしているため普段は顕在化しにくいものの、PAはさまざまなリスクを内包している。ただ、それゆえに、高いリターンを享受できているとも言える。本コラムではこの点についても後段で解説していきたい。
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