確定給付企業年金(DB)の運用においてオルタナ投資、とりわけ低流動のプライベートアセット(PA)に対する投資が拡大を続けている。PAの拡大は伝統4資産との低い相関関係、優れたリスク・リターン特性等、PAの持つ優位性もあるが、インフラや不動産と言った実物資産を除いてはクローズドエンド型が主流であったPA投資においても、使い勝手の良いオープンエンド型ファンドが増加してきたことも一因と言える。
オープンエンド型ファンドはクローズドエンド型ファンドと比較すると、ファンドレイズのサイクルに左右されず恒常的に投資ができる、追加投資や一定の制限はあるものの解約が可能である、分散されたポートフォリオに最初からコミットした金額でフルインベストメントができる、ブラインドプールがないといったさまざまな利点がある。
また、最小投資単位が一般的に5百万ドル以上と大きいクローズドエンド型ファンドでは、分散(ビンテージ分散も含め)の観点から、小規模なDBでは利用が難しいという課題があった。
一方で、オープンエンド型ファンドであれば、最小投資単位も数億円と比較的少額で設定されているケースがあり、投資後のキャッシュフロー管理で煩わされることもないので、クローズドエンド型ファンドの利用に躊躇していたDBにも受け入れられてきた経緯がある。また、リーマンショック以降に登場し、多くのDBに採用されている国内の不動産私募REITがオープンエンド型であることも、理解を進めた要因の一つであろう。
今回の時事コラムではオープンエンド型ファンドの特徴や、これまで利用の多かったインフラや不動産といった実物資産に加えてプライベートデット(PD)やプライベートエクイティ(PE)でもオープンエンド型ファンドが増加する背景、小規模DBを主体に普及するオープンエンド型のオルタナ・マルチ戦略の特徴や背景、そして最後にオープンエンド型ファンドを採用する場合の一般的な留意点等を考察していきたい。
オープンエンド型ファンドとクローズドエンド型ファンドの比較
オープンエンド型ファンドの特徴を理解する上では、クローズドエンド型ファンドと比較するのが分かりやすい。各々の相違点を図表1に焦点を当てて整理した。図表1ではインフラにおけるコアのオープンエンド型ファンドとバリューアッドのクローズドエンド型ファンドにおける相違点をまとめてみた。