バンクローンやCLO、プライベートデットなどの変動金利資産は、これまで国内投資家の間では、低金利環境におけるイールドハントや資産分散の一環として採用が進んできた。
しかし、今年に入り債券運用のパフォーマンスが大きく悪化していく中で、変動金利資産は金利上昇耐性や為替ヘッジコスト上昇耐性を持つ資産として改めてクローズアップされるようになってきている。
本特集では、多種多様な変動金利資産の特性や、採用に際しての留意点などを改めて整理するとともに、金利上昇局面のみならず、その後のサイクルをも見据えた活用可能性を探っていく。
伝統的な債券運用の苦戦で 変動金利資産の再評価が進行
8月のジャクソンホール会議で、米FRBのパウエル議長は改めてインフレ抑制に妥協しない姿勢を明確に打ち出した。7月の米国消費者物価指数の伸び率が前年同月比8.5%と、6月の9.1%から鈍化したために、マーケットでは利上げのペースがスローダウンするとの予想が広がっていたが、それを吹き飛ばした形だ。利上げに積極姿勢を見せたのはECBも同様で、7月に50bpの大幅な利上げを実施して8年ぶりにマイナス金利を抜け出すと、9月の理事会でも75bpの利上げを決めた。
海外で進行する利上げにともない、国内機関投資家の今年上半期の債券運用は、価格下落と為替ヘッジコスト上昇の両方で大きなダメージを受けてしまったわけだが、こうした局面に耐性を持つ資産として、運用機関の間で 「変動金利資産」 を提案する動きが活発化している。
変動金利資産の最大の特徴は、得られる利回りが「短期金利+スプレッド」で構成されること。利上げで短期金利が上昇すれば、そのぶんトータルの利回りが上昇するため、金利に対する価格感応度(デュレーション)が きわめて小さく、固定金利の債券(固定利付債)のように金利上昇が価格下落に直接影響しにくい。
現環境では為替ヘッジコスト上昇のインパクトが小さい点も追い風だ。
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