金融政策分析レポート「セントラル・バンク・ウォッチャー:懸念を強める中央銀行」
一部の中央銀行は、緩和的な金融政策からの出口戦略を必ずしも慎重に進めているわけではないようです。ノルウェー中央銀行、ニュージーランド準備銀行(RBNZ)、新興国市場の複数の中央銀行は、景気の回復状況を総じて前向きに評価すると同時に、インフレの上昇が予想よりも長期化するリスクを懸念して、金融政策の引き締めに着手しています。中央銀行の懸念は、インフレの上昇見通し、労働市場関連の指標の底堅さ、長引くサプライチェーンの制約、コモディティ価格の上昇によって増幅されています。最近では、予想外の動きとして、イングランド銀行とカナダ銀行が近い将来に引き締めに転じる可能性を示唆しています。
このような中央銀行のスタンスの変化を受けて、前回のセントラル・バンク・ウォッチャーの発表後、世界中の債券市場が大きく変動しています。短中期ゾーンの債券利回りが力強く上昇する一方で、長期ゾーンの利回りは低下する形となっています。背景には、予想以上に早期の政策引き締めを受けて経済成長見通しが下押しされる結果、長期的には引き締めの度合いが緩やかになるとの見方が存在します。現状維持派の代表は中国人民銀行と日本銀行であり、両者とも緩和バイアスを据え置いています。一方、ECBに関しては、インフレ上昇が一過性の現象であるという立場はそれほど堅固ではなさそうですが、「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」が段階的に終了する来春には、量的緩和のクリフ効果(唐突な終了に伴う影響)を緩和すると予想されています。最後に、FRBはテーパリング(量的緩和の縮小)計画を堅持していますが、インフレの上昇に対して警戒感を強める理事が増える可能性も否定できません。
要点
- FRB: 新たな局面に移行
- ECB: ガイダンスに対する事後的な批判
- 中国人民銀行: 出し惜しみするほど後の負担が増大
- 日本銀行: 静観の構え
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