新型コロナウイルスの感染拡大は不動産市場にも大きな影響を及ぼした。ホテルや商業施設、オフィスなど多くのセクターが打撃を受けている一方で、コロナによる生活様式の変化を追い風に成長を遂げたセクターもある。よく知られるところでは物流施設がその代表例だが、このほかにも映画やドラマの撮影に使用される「スタジオ」がひそかな注目を集めている。
知る人ぞ知る投資対象であるスタジオについて、不動産とリアルアセットに特化したグローバルのキャピタルアドバイザリーファームで不動産業界に精通する、Hodes Weill & AssociatesのVice Presidentである中村佳子氏に話を聞いた。
投資対象としてスタジオに注目が集まる理由
コロナ禍を背景に目下熱い視線を注がれている新たな不動産が、映画やドラマの撮影に使用されるスタジオだ。投資対象としてのスタジオの説明に入る前に、まずはそれらが注目を集めている背景について説明しよう。
パンデミック発生を機に注目を集めたのが「巣ごもり需要」を捉えた動画配信サービスだ。大手動画配信サービスNetflixが2021年4月に発表した内容によると、有料会員数は世界で合計2億760万人にまで増加している。大手エンターテイメント企業Disneyでも自社のコンテンツを視聴できる「Disney+」を2020年6月に立ち上げるなど、この市場への新規参入も激しい。
動画配信サービスが群雄割拠する時代となったが、実はコロナ以前からこうしたメガトレンドはすでに形成されていた。米国では2015年から2020年までの間に、ケーブルテレビ上位5社に加えてNetflix・Hulu・Amazon Prime Video・Disney+などの動画配信サービスへの総加入者数は約2.5倍に増加している。
さらに2019年から2024年の期間において、世界の動画配信サービスの市場規模は年平均14%で成長し続けると予想されている。日本国内でも同種サービスが乱立するなど、今後の成長が期待される市場の1つといえるだろう。
「これら動画配信会社がいま最も力を入れているのが、オリジナルコンテンツの制作です。そこでしか見ることができない魅力ある映画やドラマなどの動画が他社との差別化になり、会員の維持・獲得につながります。そのために欠かせないのが、オリジナルコンテンツを制作するためのスタジオなのです」と、中村氏は語る。
2021年の第93回アカデミー賞ではNetflixのオリジナル映画が16作品・38部門でノミネートされ、そのうち7部門で受賞するなど作品としての魅力にいっそう磨きをかけている。Netflixに限らず各社とも会員を増やすためにも魅力あるコンテンツを量産していかねばならないが、そのためにもスタジオの需要が高まっているわけだ。
不動産としてのスタジオが持つ特徴
それでは不動産としてのスタジオにはどんな特徴があるだろうか。
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