オルイン編集部では2026年8月、プライベートアセット(PA)のGPを幅広く見ている運用会社・ゲートキーパーを対象に、プライベートエクイティ(PE)、プライベートデット(PD)、不動産、インフラの4資産の見通し(強気〜弱気の5段階)とリスク認識を統一フォーマットで調査した。アセットクラスごとの「見方の分布」と全社合算の「市場コンセンサス」、各社の注目テーマを取りまとめる。 本ページではプライベートデットを取り上げる。
プライベートデットの見通し
今後1年(5社)
中期(3〜5年)(5社)
強気 アダムズ・ストリート・パートナーズ中立 ハミルトン・レーン、三井住友信託銀行、りそな銀行やや弱気 野村アセットマネジメント
- ハミルトン・レーン 注目:ジュニアのオリジネーション / 高金利環境が引き続き主要な追い風。ただし金利引き下げ圧力はネガティブな兆候と見ています。 / リスク:資金流入の増加が新規投資を圧迫すること、および金利の低下。
- アダムズ・ストリート・パートナーズ 注目:PEファンド傘下の中堅企業向けシニア担保付ダイレクトレンディング戦略 / 現在の金利水準を背景に、プライベート・クレジットのローンは他資産と比べて魅力的なリスク・リターンを提供している。特に足元では貸し付けの競争環境が緩和している他、今後はPE投資環境の改善によるM&Aの活発化に伴う融資機会の増加が期待される / リスク:地政学的緊張、関税引き上げによる貿易環境の悪化、インフレの継続、および景気が減速・軟化する可能性
- ラッセル・インベストメント 注目:欧州ダイレクトレンディング、スペシャル・シチュエーション、ストレスト・クレジット / 米国ダイレクトレンディングでは個人投資家のセンチメントやソフトウェア向け融資への懸念がある一方、欧州ダイレクトレンディングや、資金供給が限られる分野のスペシャル・シチュエーション、ストレスト・クレジットには魅力的な投資機会。 / リスク:高金利環境下での企業の借り換え負担の増加、借り手企業の信用力悪化リスク、米国の個人投資家のセンチメント悪化
- 野村アセットマネジメント 注目:戦略:ダイレクトレンディング・セカンダリー / ファンドレイズが活況となった2010年代後半に設定のクローズド型ファンドが償還時期、オープンエンド型ファンドの解約対応やポートフォリオ再構成における流動化ニーズ等により、ダイレクトレンディングのセカンダリー投資機会に注目。また、原資産や将来キャッシュフローがインフレ耐性を持つABF等にも注目。 / リスク:高金利・インフレによる企業収益悪化、ソフトウェア企業動向、インカム系の他アセットクラス対比での魅力減少と資金流入減、リスク要因増加によるM&A環境の低迷。
- 三井住友信託銀行 注目:ヘルスケア、ビジネスサービス、金融サービス等を中心に、主に欧米のダイレクトレンディングに注力。 / インフレを背景とした金利高止まりが一定程度見込まれることに加え、ローンスプレッドの縮小にも一服感がみられ、期待リターンは引き続き相応の水準にある。一方、借入コスト高止まりに伴う投資先企業の財務指標悪化やデフォルト増加のリスクがマイナス要因であり、マネージャー選別の重要性が一段と高まっている。 / リスク:インフレや高金利、景気減速によるデフォルト増加、エバーグリーン型商品の流動性リスク、PE市場におけるExit長期化、ソフトウェアセクターの信用悪化
- りそな銀行 注目:欧州ダイレクトレンディング戦略、プライベートデット・セカンダリー戦略 / PD全体では、中期的には安定した収益機会が期待される一方、短期的にはBDC等の解約対応状況、貸出条件緩和、借り手企業の信用力悪化に留意が必要です。なお、欧州DL戦略は相対的に魅力的なスプレッド水準を維持しており、またセカンダリー戦略はAUM拡大や流動化ニーズの高まりを背景に成長が期待されます。 / リスク:金利高止まりや投資先企業の信用力悪化により、デフォルト率上昇や回収率低下を招くリスクがあります。加えて、貸出条件の緩和は将来的な信用損失拡大につながる可能性があります。
※分布バーの数字は社数(ノービュー・未回答を除く)。平均はスタンスを強気=+2〜弱気=−2で数値化した単純平均。非公開希望の回答は社名を伏せて集計のみに反映。
コンセンサス・データ一覧
強気比率=+1以上の社の割合、弱気比率=−1以下の社の割合。順位は4アセットクラス中の平均の強気順。
①今後1年のコミットメント妙味
| アセットクラス | 回答 | 平均 | 中央値 | 強気比率 | 弱気比率 | 順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プライベートデット | 5社 | +0.20 | +0.0 | 20% | 20% | 4位 |
②中期(3〜5年)の期待リターン環境
| アセットクラス | 回答 | 平均 | 中央値 | 強気比率 | 弱気比率 | 順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プライベートデット | 5社 | +0.80 | +1.0 | 60% | 0% | 4位 |
運用者の一言コメント(回答全社)
プライベート・エクイティでは、弊社は短・中期の市場見通しに依存せず、優良ファンドへの継続した投資によって公開市場を長期的に上回る収益獲得を目指す、FoFs運用を行っております。そのため、将来的な市場見通しは設定しておりません。
一方、プライベート・クレジットでは、現状、高い利回りに加え、借入倍率が抑えられ、エクイティ比率も過去比で高いため、足元のリスク・リターンは非常に魅力的と見ています。
アダムズ・ストリート・パートナーズ
Tobias True, CFA, FRM(Partner, Investment Strategy and Risk Management)
Bill Sacher(Partner, Head of Private Credit Investments)
プライベートアセット全体で企業業績や信用リスクの著しい悪化などの兆候は見られないものの、インフレ・高金利とAIによる産業構造変化が中長期的に継続するため、様々な環境下でもαを創出できる運用者を選別することが重要。セカンダリー市場利用の一般化や流動性のあるファンドの拡大により、GPの投資評価額の透明性も重視。また、投資環境変化が海外より順次波及している日本に投資機会が増えると考えます。
野村アセットマネジメント
寒河江 弥生氏(オルタナティブ運用部長)
中長期的な見方として総じて楽観的な見方を維持しています。足元は上場市場対比で低調なパフォーマンスが続いており、2021年以降はバイアウトからの分配も停滞していますが、低パフォーマンスや低分配が長期的に持続した歴史的証拠は乏しく、構造的な変化のシグナルではないと考えます。
ハミルトン・レーン
北尾 智子氏(日本代表)
プライベートアセット市場全体としては中立からやや強気の見方をしている。 足元のプライベートアセット市場は、金利高止まり等が重石となる一方、価格調整が進んだ海外不動産、参入障壁の高いPE投資、安定収益が期待できるインフラ、プライベートデットなどに選別的な投資機会が広がっている。中長期では魅力的な投資環境に向かいつつあるものの、信用リスクや流動性リスク、政策・規制動向には引き続き注意が必要である。
三井住友信託銀行
プライベートクレジット:渡邉 紘平氏(オルタナティブ運用部 クレジット投資チーム長)
リアルアセット:有賀 英比古氏(オルタナティブ運用部 リアルアセット投資第2チーム長)
PE:千葉 恭平氏(三井住友トラスト・インベストメント株式会社 海外プライベートエクイティグループ 第1ユニット長)
インフラ:松井 博氏(オルタナティブ運用部 プリンシパル)
プライベートアセット市場では、AI・デジタル化やインフラ需要などを背景に、構造的な投資機会が広がっています。一方、高金利環境下で資本コストが高止まりする中、投資先企業の事業改善や投資機会を実際の収益につなげる力がより重要になっています。運用会社の専門性や実行力を見極め、選別的に投資機会を捉えることが重要と考えられます。
ラッセル・インベストメント
河西 正勝氏(プロダクト・ソリューション部 プロダクト ソリューション マネージャー)
プライベートアセット市場全体としては拡大を続ける一方で、出口環境の不透明感や信用サイクルの変化などを背景に、従来以上に選別が求められる局面にあると考えています。今後について、短期的には出口環境や信用動向への注視が必要ですが、地域・戦略・アセットクラスごとの分散を徹底し、それぞれの市場サイクルや構造的成長要因を見極めることで、中長期的には魅力的な投資機会が期待できると考えています。
りそな銀行
中丸 拓真氏(信託財産運用部 インベストメントマネジメント室 グループリーダー)
回答企業の個別ページ(有料掲載)
- ハミルトン・レーン 会社情報・提供戦略・調査回答の詳細 →
本調査の各社回答は市場全般に関する見解(ハウスビュー)であり、特定の金融商品の勧誘・投資助言ではありません。スタンスの数値は編集部にて強気=+2〜弱気=−2に換算して集計しています。