オルイン編集部では2026年8月、プライベートアセット(PA)のGPを幅広く見ている運用会社・ゲートキーパーを対象に、プライベートエクイティ(PE)、プライベートデット(PD)、不動産、インフラの4資産の見通し(強気〜弱気の5段階)とリスク認識を統一フォーマットで調査した。アセットクラスごとの「見方の分布」と全社合算の「市場コンセンサス」、各社の注目テーマを取りまとめる。 本ページではプライベートエクイティを取り上げる。
プライベートエクイティの見通し
今後1年(4社)
中期(3〜5年)(4社)
やや強気 ハミルトン・レーン中立 野村アセットマネジメント、三井住友信託銀行、りそな銀行
- ハミルトン・レーン 注目:スモール・ミドルマーケット / メガ・ラージ比でSMIDはリターン分散が大きく、超過収益の機会が多いと考えています。また、保守的なエントリー時の買収倍率やレバレッジ、より多様なエグジット手法も評価しています。また、上場株式がアンダーパフォームする局面における安定性も魅力的です。 / リスク:経済の不確実性と地政学リスクの高まりがM&A活動を縮小させること。
- アダムズ・ストリート・パートナーズ 注目:北米中心の中小型バイアウト/情報技術・ヘルスケア・産業・金融・消費財/低レバで成長重視のFoFs戦略 / 投資哲学としてレバレッジや金融工学ではなく、収益成長とマルチプル拡大による価値創造を重視し、創造的破壊や長期成長が見込まれるセクターに注力。特に中小型市場は参入バリュエーションが低く高いリターン余地があり、また中小型のGPはセクターに高度に特化し、集中した価値創造を提供しうると考える / リスク:長期ロックアップとJカーブ長期化の低流動性リスク。運用者選定とアクセス/ソーシングのリスク。参入価格・バリュエーション環境の高止まりリスク。レバレッジ・信用収縮リスク。市場サイクルと集中リスク、など
- ラッセル・インベストメント 注目:AIによる自動化や効率化を通じた事業改善余地の大きい企業 / AIによる自動化や効率化を通じた投資先企業の事業改善による価値創造機会が拡大。今後は、エグジット環境の正常化もリターン実現を後押しすると予想。 / リスク:高い資本コスト、バリュエーション水準、マクロ経済・政治リスク
- 野村アセットマネジメント 注目:セクター・地域:日本/戦略:ミッドラージ / 過去10年でミッドラージに成長したファンドは、投資体制・投資手法が確立し、資金調達力も比較的優位、パフォーマンス再現性が期待できる。インフレ・金利上昇への耐性力、AIによる業務改善など、投資先のEBITDA改善力に注目。株式市場再編やAOP導入、M&A市場も活況、豊富な投資機会が期待できる。 / リスク:インフレ・金利・地政学リスクの外部要因のほか、個別要因として日本PEへの資金流入による投資規律の順守、既存投資先のソフトウェア企業の状況等に注視、引き続き運用者の選別が肝要。
- 三井住友信託銀行 注目:HALO(Heavy Asset, Low Obsolescence)ビジネス、防衛関連セクター。 / AIがソフトウェア分野へ与える影響への懸念が高まる中、物的資本を要し長期的な経済価値が維持される参入障壁の高いビジネス(物流サービス、ニッチ領域メーカー等)に注目。防衛関連は各国の予算拡大の追い風あり。バリュエーションは、一定の調整を経て合理的な水準でのエントリーが期待できる。 / リスク:利下げ期待の後退に伴う金利高止まり、出口環境の低迷・回復遅延、既存投資先のリファイナンスリスク
- りそな銀行 注目:中小型バイアウト戦略、セカンダリー戦略 / 新規投資案件の取得条件はピーク時対比で改善傾向にあり、足元のビンテージには一定の投資妙味があると考えます。一方、高水準なドライパウダーや出口環境の不確実性に留意が必要です。こうした中、流動化ニーズの高まりを追い風とするセカンダリー戦略や、柔軟な出口戦略を有する中小型バイアウト戦略に注目しています。 / リスク:出口環境の正常化が想定以上に遅れ、DPI低迷が継続するリスクがあります。加えて、AIに関連する投資先企業の事業環境変化に伴う評価見直しや、高水準なドライパウダーによるリターン圧迫にも留意が必要です。
※分布バーの数字は社数(ノービュー・未回答を除く)。平均はスタンスを強気=+2〜弱気=−2で数値化した単純平均。非公開希望の回答は社名を伏せて集計のみに反映。
コンセンサス・データ一覧
強気比率=+1以上の社の割合、弱気比率=−1以下の社の割合。順位は4アセットクラス中の平均の強気順。
①今後1年のコミットメント妙味
| アセットクラス | 回答 | 平均 | 中央値 | 強気比率 | 弱気比率 | 順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プライベートエクイティ | 4社 | +0.25 | +0.0 | 25% | 0% | 3位 |
②中期(3〜5年)の期待リターン環境
| アセットクラス | 回答 | 平均 | 中央値 | 強気比率 | 弱気比率 | 順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| プライベートエクイティ | 4社 | +1.25 | +1.0 | 100% | 0% | 2位 |
運用者の一言コメント(回答全社)
プライベート・エクイティでは、弊社は短・中期の市場見通しに依存せず、優良ファンドへの継続した投資によって公開市場を長期的に上回る収益獲得を目指す、FoFs運用を行っております。そのため、将来的な市場見通しは設定しておりません。
一方、プライベート・クレジットでは、現状、高い利回りに加え、借入倍率が抑えられ、エクイティ比率も過去比で高いため、足元のリスク・リターンは非常に魅力的と見ています。
アダムズ・ストリート・パートナーズ
Tobias True, CFA, FRM(Partner, Investment Strategy and Risk Management)
Bill Sacher(Partner, Head of Private Credit Investments)
プライベートアセット全体で企業業績や信用リスクの著しい悪化などの兆候は見られないものの、インフレ・高金利とAIによる産業構造変化が中長期的に継続するため、様々な環境下でもαを創出できる運用者を選別することが重要。セカンダリー市場利用の一般化や流動性のあるファンドの拡大により、GPの投資評価額の透明性も重視。また、投資環境変化が海外より順次波及している日本に投資機会が増えると考えます。
野村アセットマネジメント
寒河江 弥生氏(オルタナティブ運用部長)
中長期的な見方として総じて楽観的な見方を維持しています。足元は上場市場対比で低調なパフォーマンスが続いており、2021年以降はバイアウトからの分配も停滞していますが、低パフォーマンスや低分配が長期的に持続した歴史的証拠は乏しく、構造的な変化のシグナルではないと考えます。
ハミルトン・レーン
北尾 智子氏(日本代表)
プライベートアセット市場全体としては中立からやや強気の見方をしている。 足元のプライベートアセット市場は、金利高止まり等が重石となる一方、価格調整が進んだ海外不動産、参入障壁の高いPE投資、安定収益が期待できるインフラ、プライベートデットなどに選別的な投資機会が広がっている。中長期では魅力的な投資環境に向かいつつあるものの、信用リスクや流動性リスク、政策・規制動向には引き続き注意が必要である。
三井住友信託銀行
プライベートクレジット:渡邉 紘平氏(オルタナティブ運用部 クレジット投資チーム長)
リアルアセット:有賀 英比古氏(オルタナティブ運用部 リアルアセット投資第2チーム長)
PE:千葉 恭平氏(三井住友トラスト・インベストメント株式会社 海外プライベートエクイティグループ 第1ユニット長)
インフラ:松井 博氏(オルタナティブ運用部 プリンシパル)
プライベートアセット市場では、AI・デジタル化やインフラ需要などを背景に、構造的な投資機会が広がっています。一方、高金利環境下で資本コストが高止まりする中、投資先企業の事業改善や投資機会を実際の収益につなげる力がより重要になっています。運用会社の専門性や実行力を見極め、選別的に投資機会を捉えることが重要と考えられます。
ラッセル・インベストメント
河西 正勝氏(プロダクト・ソリューション部 プロダクト ソリューション マネージャー)
プライベートアセット市場全体としては拡大を続ける一方で、出口環境の不透明感や信用サイクルの変化などを背景に、従来以上に選別が求められる局面にあると考えています。今後について、短期的には出口環境や信用動向への注視が必要ですが、地域・戦略・アセットクラスごとの分散を徹底し、それぞれの市場サイクルや構造的成長要因を見極めることで、中長期的には魅力的な投資機会が期待できると考えています。
りそな銀行
中丸 拓真氏(信託財産運用部 インベストメントマネジメント室 グループリーダー)
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本調査の各社回答は市場全般に関する見解(ハウスビュー)であり、特定の金融商品の勧誘・投資助言ではありません。スタンスの数値は編集部にて強気=+2〜弱気=−2に換算して集計しています。