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だから日経平均の「6万円突破」は当然…トランプ関税・ホルムズ海峡封鎖があっても株価が爆上げしている理由

第一ライフ資産運用経済研究所・藤代氏が解き明かす「経済の舞台裏」
2026年5月22日

国内外の経済・金融市場が不透明感を増す中、今後を見通すためのポイントはどこにあるのでしょうか。第一ライフ資産運用経済研究所・経済調査部で主席エコノミストを務める藤代宏一氏に解説していただきます。

※本稿は、5月18日掲載の第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト、藤代 宏一氏のレポート「工作機械受注が教えてくれる日本株・世界経済(26 年4月)」を抜粋・再編集したものです。

要旨

●日経平均株価は先行き12ヶ月61,000円程度で推移するだろう
●USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
●日銀は利上げを続け、政策金利は26年6月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
●FEDはFF金利を26年9月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう


  • 筆者が世界景気と日本株の先行きを読むために、定点観測する工作機械受注統計(日本工作機械工業会)は離陸を果たし、2026年入り後、高度を上げる段階に移行した。昨年後半以降、通商政策の不透明感が後退する中、半導体需要に裏打ちされた米国向けと中国向けの需要に加速感がみられる。この間、国内の設備投資計画も堅調であることを踏まえると、全体として回復傾向が頓挫する可能性は低い。
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  • 5月15日に発表された2026年4月の受注額(原数値)は1,889億円であった。前年比では+45.1%と加速感を強め、4ヶ月連続で20%超の伸びを達成した。筆者作成の季節調整値(以下同じ)は前月比+9.5%と増加し、3ヶ月平均値では+5.4%と増加基調が強まった。単月の内訳は「国内向け」の季節調整済み前月比が+28.3%と強く、前年比では+43.4%と急増した。大型案件が集中するなど一過性要因が強く効いた印象だが、企業の投資意欲はそれなりに強いことが示された。もっとも、人手不足と建設コスト増が足かせとなり、設備投資の進捗は遅々としている。関連指標の機械受注に目を向けると、受注高および手持ち月数が積み上がっており、これに伴って新規受注が抑制されている可能性が示唆される。この間、「外需」は前月比+0.8%と増加に転じ、3ヶ月平均では+4.6%と力強い増加基調にあり、前年比でみても+45.7%と明確な上昇基調にある。地域別詳細は確報を待つ必要があるが、3月までの傾向から判断すると中国と米国向けが増加基調を維持したとみられる。
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  • 日本の工作機械受注は、そのサイクルがグローバル製造業PMIやアナリストの業績予想(TOPIX予想EPS)と連動性を有する。4月のグローバル製造業PMIは52.6と、好不況の分かれ目の目安とされる50を9ヶ月連続で上回った。通商政策の不透明感が後退する中、AIの爆発的な需要に裏打ちされ、新規受注の回復が継続し、世界的に景況感の改善がみられている。ホルムズ海峡の事実上の封鎖によるサプライチェーンの乱れから、サプライヤー納期は長期化している点に留意する必要はあるが、世界全体でみれば景況感の回復が明確化している。そうした下でTOPIXの予想EPSは、円安と企業の資本効率改善に向けた取り組みが奏功していることも相まって拡大基調を維持している。
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  • 製造業PMIを地域別にみると、日本は55.1へと3.5pt上昇した。半導体関連製品の引き合いが強いなか、化学業界などで石油関連製品の供給制約に対する懸念から製品在庫の積み増しを急いだ可能性が浮かび上がる。他方、国内では個人消費の増勢が鈍化している。日銀が算出する実質消費活動指数は、物価高の影響などから横ばいで推移している。この間、IT関連財の生産集積地である台湾は55.3へと2.0pt上昇。輸出統計との方向感相違は解消に向かっており、景況感の回復は広がりをみせている。韓国は53.6へと1.0pt上昇。半導体関連価格が急騰するなか、大手メーカーが増産を急いでいることから、その波及効果が窺われる。
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  • 米国は54.5へと2.2pt上昇。米国内におけるAI関連投資が隆盛を極めるなか、その恩恵が広がりを持ちつつあることを示唆している。データセンター投資は半導体に限らず建設、発送電、冷却装置といった業種に波及効果をもたらす。4月は自動車販売台数が1,592万台(年換算)と好調であった。労働市場の一方的な悪化が回避されるなか、個人消費は底堅く推移している。ユーロ圏は52.2へと0.6pt上昇した。ドイツが51.4、フランスは52.8と双方とも50を上回って推移している。
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  • 中国は52.2へと1.4pt上昇した。既往の不動産市況悪化とトランプ関税対策として、中国当局は景気対策を強化しており、一段の減速は回避されている。中国当局の政策態度を映じるとされるマネー関連統計に目を向けると、3月の社会融資総量(新規フローの12ヶ月平均値)は前月比▲1.9%と減少し、残高は前年比+7.9%へと減速した。新規融資のGDP比(前年差)をとった通称クレジットインパルスも▲2.2ptと下を向いた。この指標が日本株の先行指標として機能してきた経緯を踏まえると、現在の株高は一定の裏付けを伴っていると言えるが、風向きは悪くなっている。
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  • 工作機械受注サイクルの位置取りを確認するために、縦軸に受注額の水準(36ヶ月平均値からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、2025年央までは中心点付近で小さな渦を描いてきたが、過去数か月は右上領域に向けてはっきりと歩み出した。過去の経験則に従うなら今後も右上方向に進路をとると予想され、回復傾向がはっきりとしてくるだろう。半導体需要に裏打ちされた設備投資は、今後しばらくは増勢を強めると予想される。もっとも、循環図が左方向に進む頃に、相場は下降局面を織り込みにいくのが過去の経験則である。シリコンサイクルが何合目に位置するのか、その目安を探る意味でもこの指標を定点観測していく必要があろう。
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藤代 宏一

藤代 宏一

第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

2005年に第一生命保険に入社し、2008年にみずほ証券へ出向。2010年に第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向。2年間にわたり経済財政白書の執筆、月例経済報告の作成を担当。2012年に第一生命経済研究所に帰任。その後、第一生命保険より転籍し、早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)。2023年4月より現職。参議院予算委員会調査室客員調査員(2018年)/日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)