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連載 小倉邦彦の資産運用時事コラム 第19回 IMFが注視する「拡大するプライベートクレジットとそのリスク」(前編)

2024年10月18日
小倉 邦彦 /  『オルイン』シニアフェロー
元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー

目次

前編

はじめに

IFMレポート(GFSR)のサマリー

プライベートクレジット(PC)の始まりと成長

PCが金融の安定性を脅かす可能性

PCの借り手の特徴

PCファンドの流動性

後編

PCにおけるレバレッジ

PCの評価(バリュエーション)

PEファンド、銀行、投資家等との相互関連性

IMFによる政策提言

追記:日銀が指摘するPCファンドの潜在的リスク

終わりに

はじめに

 IMF20244月に公表した国際金融安定性報告書(Global Financial Stability ReportGFSR)において、欧米を中心に急拡大し、バンクローン市場やハイイールド債市場に匹敵する規模に成長したプライベートクレジット(PC)を重点的に取り上げてその潜在的リスクを分析した。PCは日本でも確定給付企業年金(DB)の資産運用において重要な位置づけを占める資産クラスになっていることもあり、本コラムでGFSRの概要を取り上げると共に、適宜筆者のコメントも追記することにした。

 IMFも個々のPCファンドに懸念があるということではなく、市場規模がドライパウダーも含め2兆ドルを超えるまでに成長し、その規模感から金融市場に与える影響が無視できない存在になっているという点と、巨大な市場に成長しているもののパブリック市場と異なり公開された情報が限定的であるという点に懸念を感じているようである。金融システムの健全性監督機関の立場から見たレポートではあるが、PC市場全体をある程度俯瞰したものになっており、個々のPCファンドに投資する際にも、「木を見て森も見る」という観点から参考になるものと思われる。 

同じく本年4月に日銀からリリースされたPCに関するレポートでも、健全性監督機関の立場から見たPCの脆弱性について言及されていたので、巻末でこれについても取り上げることにした。

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小倉 邦彦

 『オルイン』シニアフェロー
元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー

1980年三井物産株式会社入社。本社、広島支店、ドイツ(デュッセルドルフ)等にて経理、財務業務を担当後、1998年~2006年 本店プロジェクト金融部室長。
2006年~2009年 米国三井物産ニューヨーク本店財務課 GM。
2009年~2011年 本店財務部企画室 室長。
2011年~2013年 三井物産フィナンシャルサービス株式会社 代表取締役社長。
2013年~2017年 三井物産都市開発株式会社CFO。
2017年5月~2022年6月 三井物産連合企業年金基金 常務理事兼運用執行理事。
2022年7月~2023年3月 同基金シニアアドバイザー。

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