連載 小倉邦彦の資産運用時事コラム第18回 アセットオーナー・プリンシプルや「見える化」、資産運用ガイドライン改定にDBはどう対応すればよいのか? 【前編】
はじめに
内閣官房下に設けられた「アセットオーナー・プリンシプル(以下「AOプリンシプル」)に関する作業部会」で本年3月から議論されていたAOプリンシプルは、6月3日に開催された第4回会合で原案が提示された。パブリックコメントも7月下旬に受け付けが終了しており、8月下旬から9月上旬には最終化される予定である。
AOプリンシプルの原案は第3回会合で示されたアウトラインにおける5つの原則とその補充原則から構成されている。AOプリンシプルの位置付けにも記載がある通り対象となっているのは、公的年金、共済組合、企業年金、保険会社、大学ファンドのほか、例えば資産運用を行う学校法人など幅広く、その規模や運用資金の性格等はさまざまである。
このことが、全てのアセットオーナーに対する共通の原則との建て付けながらも、補充原則ではGPIF等の一部資産規模の大きいアセットオーナーを対象にしたと思われるレベルの高い原則が盛り込まれたことの背景になっている。
いずれにしても5つの原則と各原則に付随する補充原則という構成は、金融庁主導で作成されたコーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)とうり二つである。ちなみに、スチュワードシップ・コード(以下SSコード)は同様に8つの原則と各原則に付随する指針で構成されている。
上場企業に対するCGコードは建前上ガイドラインであり法的拘束力はないが、東京証券取引所が上場企業に「コーポレートガバナンス報告書」の開示ならびに提出を求めている。そのため違反や理由説明義務が果たされていない場合、東京証券取引所は企業名を公表する可能性があるので、実質的には拘束力を持ったコードであるが、AOプリンシプルはCGコードのような拘束力はない。規模の大きなDBを主体にそれなりの数のDBが受け入れると思われるが、一方で、規約型を主体とした小規模なDBがどのくらい受け入れてくれるのか、この点が大きな課題である。
一方で、DBとして気になるのは12月に公表された資産運用立国実現プランを受けて進んでいる、「見える化」の具体案や「確定給付企業年金に係る資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン(以下「資産運用ガイドライン」)改定に関する、社会保障審議会企業年金・個人年金部会での議論の行方であろう。「見える化」については4月24日に開催された同部会で、毎年DBが各厚生局に提出している「事業報告書・決算に関する報告書」の報告事項に一部追加事項(運用の基本方針と専門人材の活用に関する取り組み状況を含む情報)を加え、厚労省がDB別に公表すること、開示に際しては規模要件を設けることが事務局から提案され大まかな方向性として了承されている。
本コラムではAOプリンシプル(案)の概要や社保審での「見える化」や「資産運用ガイドライン」改定の議論の概要を紹介するとともに、後編では実際にDB関係者が本件にどのように対応しようとしているのかを仮想座談会形式で紹介していきたい。なお、本稿執筆時点ではAOプリンシプルは「案」であるが、以下では記載を省略して「AOプリンシプル」とする。
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