世界的な株式・債券の同時下落に見舞われた2022年度の最悪期から脱したとはいえ、為替ヘッジコストの高止まりや金融政策の動向など、確定給付企業年金(以下、企業年金)の運用は引き続き先行き不透明な環境が続いている。本企画では、そうした不確実性に満ちた環境下における2023 年度の運用パフォーマンスを振り返りつつ、その結果をもたらした要因についても掘り下げていく。また足元、資産運用立国実現プランでアセットオーナーの運用の高度化や見える化が要請されているなどの要因も加わり、企業年金の運用パフォーマンスに対するステークホルダーや社会からの関心も高まっている。7月早々にも公表される見込みのGPIFの2023年度の運用実績は、20%を超えるプラスリターンが想定されている。
ともすれば株式や為替のリスクを大きくとるGPIFと単純比較し、「企業年金はGPIFに劣後している」といった印象を持たれかねないが、長期安定運用を基本としリスクを抑えた保守的な運用をする企業年金と結果だけで単純に比較するのは意味がない。
そこで本企画では、一般的な企業年金がどのような運用目的を掲げ、どのような資産構成でどの程度のリスクをとっているかといった運用の基本情報や目下の運用課題、さらには資産運用立国への対応も含め、マーサージャパンのウェルス・コンサルティング本部代表 五藤智也氏のインタビューとともに確認していきたい(執筆 「オルイン」シニアフェロー 小倉邦彦)。
マーサージャパン
ウェルス・コンサルティング本部代表
五藤 智也氏
五藤 昨年度の企業年金のリターンの平均値は8~9%程度と見ています。企業年金連合会が公表する企業年金実態調査結果(2022年度版)の資産配分に、各資産のベンチマークインデックスを乗じて推定値を計算したものです。同調査では外国債券は「ヘッジ付き」と「ヘッジ無し」で区分されていないため、ヘッジ付きが半分より少し多いくらいと想定しています。
2023年度の運用実績を引き上げた要因は、株式市場の上昇と為替の円安に尽きるといっても過言ではないでしょう。株式は国内外ともに40%以上上昇しました。また、外国債券に為替ヘッジをかけずにオープンにしていれば、さらにリターンのプラス幅は拡大したと言えるでしょう。
株式の配分比率が3%多いか少ないかで、ポートフォリオ全体のパフォーマンスは1%程度変わってくるとの試算もあります。
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