一般社団法人東京国際金融機構(通称、FinCity.Tokyo)は、2022年2月24日(木)に、オンラインイベント「Tokyo Asset Management Forum 2022(TAMF2022)」を開催した。
東京都が掲げる「国際金融都市・東京」構想のプロモーションを担うFinCity.Tokyoが主催者となり、東京における資産運用ビジネスの活性化、とりわけ新興資産運用業者の認知度向上を目的に、2019年から毎年開催している同イベント。昨年に続いてオンライン開催となった今回も、国内外のアセットマネジャーやアセットオーナーをはじめ、資産運用業界関係者を中心に約500名が参加した。
総合司会を務めた、マネックスグループの資産運用会社、カタリスト投資顧問の取締役副社長COO、小野塚惠美氏の進行のもと、国内外から集ったさまざまなスピーカーが登場し、それぞれの視点から、新興マネジャー育成の意義、さらに、わが国の資産運用業の高度化・多様化に向けたプレゼンテーションやディスカッションが展開された。
弊誌『オルイン』を発行する(株)想研もメディアパートナーとして参加したこのオンラインイベントの模様を、ダイジェストで紹介する。
開会挨拶
世界有数のアセットオーナーに対する
新興マネジャー投資動向調査
はじめにFinCity.Tokyoの専務理事、有友圭一氏が開会挨拶を行った。その中で有友氏はFinCity.Tokyoが独自に行った世界有数のアセットオーナーに対する新興マネジャー投資動向調査の結果も紹介した。本調査は、著名な14の年金基金やソブリン・ウェルス・ファンド(総額4.6兆ドル)に対し、新興マネジャーへの配分割合や採用マネジャー数、投資対象資産クラス、期待する役割、アクセス方法、投資の障壁となる要因など、さまざまな視点でインタビューを行ったもので、世界有数のアセットオーナーによる新興マネジャーへの投資動向を知ることのできる貴重な結果であり、これから新興マネジャーの採用を検討するアセットオーナーにとっても示唆に富んだデータと言えるだろう。
開会挨拶
一般社団法人 東京国際金融機構 専務理事 有友圭一氏
基調講演1
資産運用業の高度化について
続いて行われた基調講演1では、「資産運用業の高度化について」と題して、金融庁総合政策局総合政策課の資産運用高度化室長、桑田尚氏が登壇した。金融庁では、インベストメントチェーンの機能をさらに向上させるために、その重要な担い手である資産運用会社および親会社との対話を強化している点に言及。運用能力の向上を通じて運用資産のリターンを拡大させることが重要であると訴えた。さらに国内外におけるESG投資の拡大の状況にも触れ、いわゆる「グリーンウォッシュ」の慣行を是正することが投資家保護の観点からも重要であるとの認識を示した。さらに東京を国際金融センターへと発展させることによって、国内および海外の資産運用会社にとってWin-Winの効果をもたらすことが期待されており、そのために関係省庁が連携して推進している点も強調した。
基調講演1
資産運用業の高度化について
金融庁総合政策局総合政策課の資産運用高度化室長、桑田尚氏
基調講演2
「日本のアセットオーナーと
エマージングマネジャーへの期待」
基調講演2では、米国を代表する年金スポンサーとして知られるテキサス州教職員退職年金(TRS)で、エマージングマネジャープログラムの責任者を務めるKirk Sims氏が出演した。TRSでは17年前からエマージングマネジャープログラムを開始、現在では特化した運用チームを擁し、49億ドルにもコミットメントを擁するまでに体制と投資割合の拡大を図ってきたと説明し、その変遷について紹介した。現在、TRSのエマージングマネジャーへの投資を資産クラス別に見ると、プライベートエクイティが46%で最も多く、不動産が32%、パブリックマーケットが17%、さらにENRI(エネルギー・天然資源・インフラ)への配分も4.9%となっているという。またリターンについては、過去5年では11.1%、3年では10.3%、また直近1年では25.6%と、長期にわたって高いパフォーマンスを継続していることが示された。
基調講演2
日本のアセットオーナーとエマージングマネジャーへの期待
Director, Head of Emerging Manager Program, Teachers Retirement System of Texas
Kirk Sims氏
資産運用者プレゼンテーション1
その後、資産運用者プレゼンテーション1のセッションでは、国内外のさまざまな資産運用会社8社が、各社の概要や投資哲学・運用の特徴についてプレゼンテーションを行った。
資産運用者プレゼンテーション1に参加したマネジャー
1.Ariake Capital
2.BUSHIDO Asset Management
3.Capital Asset Management
4.FINOLAB
5.Nihonbashi Value Partners
6.ORIOR Asset Management
7.HiJoJoPartners
8.Keyaki Capital
資産運用者プレゼンテーション1
パネルディスカッション
日本の運用業界リーダーたちのビジョン
続いて、国内資産運用会社のトップをスピーカーに迎えて展開されたパネルディスカッション「日本の運用業界リーダーたちのビジョン」では、日本の資産運用ビジネスにおける新興マネジャー育成の意義と課題について議論が行われた。開会挨拶で有友氏が示した海外アセットオーナーの調査結果や、Kirk Sims氏による基調講演1で披露されたTRSのエマージングマネジャープログラムの取り組みを引き合いに、わが国で新興マネジャーが十分に育っていない現状を踏まえ、今後、資産運用業のエコシステム構築に向けた課題などが議論された。
パネルディスカッション
「日本の運用業界リーダーたちのビジョン」
・パネリスト
アセットマネジメントOne株式会社 取締役社長 菅野暁氏
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 菱田賀夫氏
レオス・キャピタルワークス株式会社
代表取締役会長兼社長 最高投資責任者 藤野英人氏
・モデレーター
一般社団法人 東京国際金融機構 専務理事 有友圭一氏
資産運用者プレゼンテーション2
前半に続いて、資産運用者プレゼンテーション2のパートにも資産運用会社8社が登場し、各社のキーパーソンが投資哲学・運用の特徴を紹介した。
資産運用者プレゼンテーション2に参加したマネジャー
1.Seiryu Asset Management
2.Polymer Capital
3.Northleaf Capital Partners
4.Ellington Management Group
5.AIP Asset Management
6.GO Fund
7.Tishman Speyer
8.Columbia Threadneedle Investments
資産運用者プレゼンテーション2
基調講演3
「大学ファンドの運用の考え方について」
海外では年金基金やソブリンウェルスファンドと並んでアセットオーナーの重要な一角を担っている大学の運用資金だが、日本でもここにきて「10兆円ファンド」の創設が大きな話題になっている。そこで3本目の基調講演には、国立研究開発法人科学技術振興機構の運用業務担当理事、喜田昌和氏が登壇。同機構に設置されたいわゆる「大学ファンド」について、ファンド創設に至った背景や狙い、具体的な運用・監視委員会の体制や今後運用がスタートするポートフォリオの枠組みなどが示された。
基調講演3
「大学ファンドの運用の考え方について」
国立研究開発法人科学技術振興機構 運用業務担当理事 喜田昌和氏
基調講演4
「外部マネジャーを通じた投資」
最後のセッションは、世界有数のソブリンウェルスファンドとして知られるNorges Bank Investment Managementで外部運用戦略のグローバルヘッドを務めるErik Hilde氏による基調講演。1990年代後半から外部マネジャーへの投資を手がけ、現在、株式アクティブ運用ではグローバルで100近くのマンデートへと拡大している状況を説明。マネジャーを選定する際には、過去のトラックレコードにはとらわれず、独立系で小規模な運用者を選好している点なども紹介された。
基調講演4
「外部マネジャーを通じた投資」
Norges Bank Investment Management Global Head of External Strategies
Erik Hilde氏
3時間にわたって繰り広げられた今回のTAMFには、新興マネジャーはもとより、海外の著名なアセットオーナーやわが国を代表するアセットマネジャーのトップなど、合計25人以上のスピーカーが登場した。新興マネジャーの紹介にとどまらず、わが国における資産運用ビジネスの活性化、ひいてはインベストメントチェーン高度化に向けて、アセットオーナーやアセットマネジャーをはじめ、運用に携わるあらゆる関係者にとって示唆に富んだプログラムとなったのではないだろうか。また今回は、多くのセッションが英語で展開(日本語で同時通訳)されるなど、海外の関係者にも開かれたフォーラムであったことも付け加えておきたい。
Tokyo Asset Management Forumの詳細情報はこちら(FinCity.Tokyo 特設ページ)
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