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資産配分検証のススメ

2021年7月6日
青木 大介氏 / マーサージャパン 資産運用コンサルティング部門 シニアコンサルタント

2020年度の株式市場は、前年のコロナ禍の反動という側面はあるものの、外国株式(MSCI KOKUSAI)がデータを遡れる1970年以降、年度ベースで最も高い収益率を計上した。また、国内株式(TOPIX:配当込み)の収益率は過去最高ではなかったが、198912月の水準を超えて過去最高値を更新している。このように昨年度の株式市場はかなり好調に推移し、結果、各年金基金の資産額も大幅に増加し、財政状況も1年前と比べてかなり改善していると思われる。

こうした環境下、政策アセットミックス(以下政策AM)において株式がオーバーウェイトとなった年金基金はルールに則ってリバランスを実施することが多かったと想定されるが、果たして、政策AMに戻す(あるいは半分リバランスで近づける)ことは妥当なのであろうか。

多くの年金基金においては5年あるいは3年に一回のタイミングで財政再計算を実施し、その結果を踏まえて政策AMを見直していることと思う。しかしながら、例えば20203月末を基準として政策AMを策定している年金基金の場合には、その時と足もとの状況ではかなり財政状態が異なっているはずである。すなわち、財政状況の余裕が拡大していることを踏まえると、当時策定した目標利率を引き下げて運用をしても、将来の年金給付を十分に賄えるという状況にあるかもしれない。換言すると、現状の政策AMは、年金運用の目標に照らしてリスクを取りすぎているのかもしれないのである。

多くの年金基金にとっては、政策AM策定時の前提条件が大きく変わっているので、本来的にはALM等を実施して再策定するのが望ましい。しかしながら、ALMを実施するのはコストも手間もかかるので、通常のスケジュール以外でこれを実施するのには困難を感じる方が多いかもしれない。このような場合には、過去に実施した結果を利用して、資産額については足もとの状況を反映する、というだけでも十分に意味ある結果が得られるであろう。

今後についても現在のような好調な市場環境が継続すれば望ましいことではあるが、いつかは市場環境が悪化する局面が到来する。特に現在のような低金利環境下では、投資家の多くがリスクを取りすぎる傾向にあることは、歴史が示しているところである。将来の市場環境の悪化時に損失をできるだけ軽減するために、現状のリスクテイクが妥当かどうか、検証してみてはどうであろうか。

※本記事はオル・インvol.60に掲載されたコンサルタント・オピニオンからの転載です。

青木 大介氏

マーサージャパン 資産運用コンサルティング部門 シニアコンサルタント

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