連載 小倉邦彦の資産運用時事コラム 第27回OCIOの最前線を探る〜コンサルティング会社編Part.1 NFRC 古林エグゼクティブ・コンサルタントに聞く
アセットオーナー・プリンシプル(AOP)は原則2で「知見の補充・充実のために必要な場合には、外部知見の活用や外部委託を検討すべきである」と規定し、さらに補充原則2-2ではアセットオーナーの知見の補充・充実のための外部組織活用の一例としてOCIOを挙げたことで、OCIOに対する確定給付企業年金(DB)の関心が急速に高まっている。
OCIOは「Outsourced Chief Investment Officer」の略で、2000年代前半から欧米の一部のアセットオーナーの間で利用が広がってきた運用スキームである。投資家が専門的かつ高度な運用スキルを求めて、運用業務を外部の専門家にアウトソースするというもので、特に2008年の世界金融危機以降、積立不足に陥った欧米の閉鎖型DBを中心に急速に拡大したと言われている。運用スキルを有する専門的な人材の投入が容易ではない閉鎖型DBにおいて、資産配分の決定、マネジャーセレクションなどの一連の運用業務を外部のプロフェッショナルに一任することで、多様な資産クラスへの分散や市場環境の変化に応じた動的な管理までを、一気通貫で任せることができるソリューションとして利用が進んでいる。また、米国では公的年金の一部や大学基金(エンダウメント)、財団(ファウンデーション)でも広く利用されている。
一方で、日本のDBでは総幹事制があり欧米で主流の全部委託(Full Fund Mandate)が事実上困難であったことや、DB自身に運用は自分でやりたいという自前主義が強かったこと、AOPで指摘されるまではコンサルタントのような外部知見の活用はあっても、自らの運用体制に限界がある場合でも運用を外部に委託するという発想がなかったこと、あるいは中規模以上のDBに関しては金融庁のプログレスレポート2023で指摘されたほど専門性が不足している訳ではなく、従来から確りとした運用をしていたこと等、いくつかの要因が重なり合って、これまでOCIOが普及する余地はなかったと言える。しかし、AOPを契機に運用力向上の一環としてOCIOに運用資産の一部を委託するDBも実際にでてきている。これは従来とは異なる大きな変化であり、OCIOが今後のDBの運用体制に地殻変動をもたらすのか?あるいはOCIOの採用は極一部のDBに限られた動きであり、メインストリームになることはないのか?という点は大いに気になるところである。
そこで、本コラムでは日本でOCIOのプロバイダー業務を推進しているコンサルティング会社3社に、各社の体制やこれまでの実績をお伺いするとともに、今後のDBあるいは学校法人等アセットオーナーへの拡大可能性や、それに伴う課題等を伺っていくことにした。最初のインタビューはDBだけでなく学校法人からの受託にも力を入れている野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング(株)フィデューシャリー・マネジメント部兼CIOマネジメント部 エグゼクティブ・コンサルタントの古林大輔氏にお願いした。