資産運用時事コラムでは、今回と次回の2回にわたって「プライベートデット」を取り上げます。今回は「基礎編」としてプライベートデットの基本的な仕組みを総括し、次回はダイレクトレンディング戦略を中心に足元の市場環境と今後の見通し・課題を整理します。
■今回の目次
1.PDの基本的な仕組み
・DLにおける融資先の規模
・スプレッド水準は?
・シニア、メザニン、ユニトランシェの違い
・代表的なコベナンツとその重要性
・ファンドレベルのレバレッジは必要か
・一般的なファンドの形態~クローズドエンド型かオープンエンド型か~
・「スポンサー付き」とは?
・どのようなファンドを選択すべきか
2.ベンチマークにみるPDのリターン推移、クレジットロスはどの程度?
■後編の目次(後日掲載予定)
ダイレクトレンディングに関する井戸端会議 ~ 最新動向を議論する
・はじめに~井戸端会議参加者プロファイル
・年金の増加は巡航速度、DLに熱い視線を注ぐ生保は年金を上回る勢い
・当面フォローの風が吹き続けるが今後の懸念は?
・スポンサー付き案件への影響
・パブリック市場(バンクローン、HY債)の変調を受けPDは融資が大型化
・大型案件ではコベナンツ・ライトが進む?
・DLは既に大型LBOの世界でも地位を確保、パブリック物と共存する方向へ
・DLにおけるセカンダリー投資の現状
・DLにおけるESGの観点
・筆者あとがき
今回のコラムではインカム系のプライベートアセット(以下PA)として不動産、インフラと共に主軸をなすプライベートデット(以下PD)について取り上げる。PDはプライベートエクイティ(以下PE)や不動産、インフラと比べると比較的新しい資産クラスであり、リーマンショック後の規制強化で貸出余力が低下した銀行に代わり、中小企業向け融資の新たなプロバイダーとして発展してきた経緯がある。従って、リーマンショック前は銀行が取り扱わないメザニンローンがPDの主たる融資対象であり、ファンドの数や金額も限定的であった。