連載 小倉邦彦の資産運用時事コラム 第23回企業年金のご意見番ニッセイ基礎研 徳島さんに聞く 「企業年金を取り巻く昨今の環境変化と2025年の運用課題」(後編)
企業年金を取り巻く環境は政府による資産運用立国推進の流れの中で大きく変わってきた。金融庁が作成し2023年4月に公表したプログレスレポート2023では確定給付企業年金(DB)がフォーカスされ、運用の高度化のためにはDBの専門性や人員の不足への対応が必要である点が指摘された。また、2023年11月には金融サービス提供法(金サ法)の改正案が成立し、DBも金サ法上の「金融サービスの提供等に係る業務を行う者」に該当することが規定され、「顧客等の最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行すべき義務」が課せられることになった(この点に関し厚労省は従来の忠実義務と変わらないと説明している)。
資産運用立国に関しては、内閣官房下の「資産運用立国分科会」でDBを含むアセットオーナーの改革が議論され、2023年12月に「資産運用立国実現プラン」が公表された。この中ではアセットオーナー・プリンシプル(AOP)を策定することが施策として盛り込まれたほか、DBの改革としては、ア)資産運用力の向上(人材育成等の取り組みや委託先の評価、見直しの促進)、イ)共同運用の選択肢の拡大(連合会の共同運用事業の発展等)、ウ)加入者のための運用の見える化の充実(他社と比較できる見える化:情報開示)、が課題や施策として記載された。
資産運用立国実現プランを受けて、2024年8月にAOPが策定され、現在多くのDBが受け入れに向けて作業を進めているところである。AOPの詳細については省略するが、アセットオーナーが受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていく上で有用と考えられる5つの原則から成り立っている。DBはこれを受け入れるにあたって、従来にも増して専門的知見の確保や実効性のあるガバナンス体制の構築が求められるほか、適切なリスク管理、運用委託先の評価や定期的な見直しが要求される。AOPの策定に合わせる形で、DBの資産運用業務における遵守事項を定めた資産運用ガイドラインの改訂案が、本年1月初旬に厚労省から通知された。
このようにDBを含むアセットオーナーを取り巻く環境が大きく変わりつつある中で、前編ではDBに直接影響するAOPや資産運用ガイドライン改訂の意味するところや留意点、今後DBが運用力やガバナンスの向上を求められる中で、どのように対応していくべきかを、企業年金のご意見番とも言えるニッセイ基礎研 徳島氏に伺った。
後編では日米金融政策が異なる方向に向けて動くと想定される中で、カナダ・メキシコへの関税発動発表(その後延期)や対中国関税発動と既に関税政策の動きが本格化する等、トランプ政権の施策で波乱が予想される市場環境を踏まえた、2025年におけるDBの運用課題についてお話を伺う。
注)本インタビューは2月13日に実施された。
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