コロナ禍をきっかけとした超緩和的な金融政策が転換期を迎えている。経済再開にともなう需要と供給のギャップ、エネルギー価格の高騰などを受けた稀に見るインフレの進行が、社会や経済に影を落とし始めたからだ。いまマーケットでは、利上げに対するさまざまな予測が飛び交っているが、ひとたび利上げが開始されれば、ポートフォリオ運用の中心を占める債券・クレジット資産への影響は避けられない。
そうした中、日本の年金・機関投資家は金利上昇とどう向き合っていけばよいのか。債券運用マネジャーや年金コンサルタントの見解・提言を踏まえ、今後の市場を見据えた債券運用の姿を探る。
急激なインフレ進行が景気サイクルを加速させている
2020年初頭に新型コロナウイルスの感染爆発が発生し、20年3月には各国が金融・財政政策の両面から未曾有のサポートを行い、経済を下支えした。その後デルタ株、オミクロン株といった変異株の脅威に晒されながらも、経済は回復に向かい、20年の中盤以降各国の株価は上昇を続けていった。
特に米国では急激な経済回復を受けて21年に入り長期金利が急伸し、3月の消費者物価指数(CPI)はインフレ目標の2%を超えたが、当時は一時的な上昇と見られ、政策金利は23年頃まで据え置かれるというのが市場のコンセンサスだった。しかし、CPIは21年4月に前年同月比+4%を超えると、そのまま上昇を続けて22年2月は同+7.9%と40年ぶりの水準に達しており、マーケットでは今年中に複数回の利上げが織り込まれている。
ピムコジャパンリミテッド(以下、PIMCO)の日本債ポートフォリオ・マネジャーでエグゼクティブ・バイス・プレジデントの覚知禎氏によると、21年12月に同社内で開催されたシクリカル・フォーラム(短期経済予測会議)では、「急速に進む景気サイクル」がテーマに上がったそうだ。
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