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コロナ禍の最中にコア型ファンドの運用を開始
現地マネジャーに聞く欧州不動産の投資機会

2021年7月11日

三菱地所グループの不動産運用会社ヨーロッパキャピタルは2020年11月、大陸欧州に特化したコア型オープンエンドファンドの一次募集を完了した。コロナ禍にも関わらず投資家の関心を集めた背景や、欧州不動産の注目点について、ファンドマネジャーのアンディ・ワトソン氏に聞いた。

 

ヨーロッパキャピタル
パートナー
ファンドマネジャー
アンディ・ワトソン氏

 

 

――はじめに、ヨーロッパキャピタルの概要を教えて下さい。

当社は1995年に設立されたロンドンに本拠を置く不動産運用会社で、これまで11本のファンドを組成し、投資地域は欧州21カ国に及びます。もともとはバリューアッド型のクローズドエンドファンドを中心に手掛けてきたのですが、2010年の三菱地所グループへの参加を契機にコア型事業の事業を進め、2020年11月にオープンエンドファンド「Europa Diversified Income Fund」(以下、EDIF )の運用開始に至りました。

 

――バリューアッド型ファンドを得意とする貴社が、なぜコア型オープンエンドファンドに参入したのですか。

大きく3つの理由があります。

1つ目はマーケット環境です。投資家の間では安定インカムへのニーズがますます高まっており、その受け皿となる不動産への資金流入が進んでいます。また、欧州の投資用不動産の市場規模は米国とそこまで変わりませんが、オープンエンドファンドの市場規模は依然米国と比較し相対的に小規模に留まっており、拡大の余地は大きいと考えられます。

2つ目は、当社が投資対象を検討するなかで、コア型ファンドとしては適格でもバリューアッド型ファンドのリターン目線には合わなかったり、既存ファンドのエリア分散の観点から投資を見送ったりしたケースが多々ありました。これまでは社内で生かしきれなかった投資機会を投資家の皆様に提供できれば、Win-winの関係を築くことができます。

最後に、三菱地所グループでは米国、欧州、日本、アジアの各地域に特化したオープンエンドファンドを組成する「グローバルプラットフォーム」の整備を進めています。EDIFは日本と米国に続く欧州のコア型ファンドに位置づけられるものです。

 

――EDIFの特徴を教えて下さい。

運用面では、分散されたコア型ファンドの考えに基づき、経済が強固で不動産取引による流動性が高い地域を選んでいくトップダウン・アプローチと、バリューアッド型ファンドで培ったマーケット感覚やネットワークを生かして個別物件を選定するボトムアップ・アプローチを組み合わせています。

投資対象は大陸欧州に立地する物流施設と住宅、オフィスで、当初から物流施設と住宅の比率を高めています。これは、コロナ禍で加速した世の中の構造変化のトレンドを捉えるという運用方針によるもので、現状商業施設やホテルには投資していません。この結果がコロナ禍でもディフェンシブに働き、投資家のデューデリジェンスの際にも高く評価されました。本ファンドは後発での組成になりますが、このようなポートフォリオが構築できたのもレガシーのないクリーンシートゆえ、と言えるでしょう。

 

――欧州不動産の足もとの投資環境を、どのように捉えていますか。

欧州経済にとってコロナ禍は今後1~2年の間、大きな影響を与えます。ただ、政府の経済対策やワクチンの接種が進んだことで明るい兆しも見えており、エコノミストも2021年は経済が強い回復を遂げると予想しています。現状はトンネルの先にある光がようやく見えてきたところですが、こうした兆しを多くの人が実感できれば、不動産市況にとっても追い風となっていくでしょう。

 

――住宅について、日本ではコロナ禍で郊外化が進むという意見もあります。欧州の住宅ではこうした動きは出ていないのですか。

コロナ禍を加味する必要はあるものの、欧州において都市化は継続した大きなトレンドです。また、日本ほど賃貸住宅が普及しておらず、今は持ち家から賃貸へとライフスタイルが変化する最中にあります。都市への人口流入と賃貸志向が同時に進み、対応するストックが少ないため、そこに投資機会が存在します。

 

――欧州の不動産投資において、有望な都市やアセットクラスはありますか。

都市を挙げるならば、まずはコペンハーゲンです。計画的に整備された町並みで、競争力が高い大学も存在します。その結果、若年層が多く流入して出生人口も伸びています。EDIFでも住宅に投資しており、将来にわたって高いポテンシャルを発揮できる都市と言えます。

2つ目はパリです。すでに魅力ある都市の代表格ですが、2024年にオリンピックを控え、68の新駅、200キロの鉄道敷設を含む巨大な都市再開発計画「グラン・パリ」が進行中です。インフラが整えば不動産価値も向上するため、パリの競争力もますます高まると考えられます。

アセットクラスについては、私たちは住宅を「レジデンシャル」ではなく「リビング」と捉え、広義の住宅に投資機会があると考えています。EDIFも現在は流動性重視で従来型の賃貸住宅に特化していますが、将来的には学生寮やシニアリビングへの投資も視野に入れています。

 

――本日はどうも、ありがとうございました。

 

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