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新FRB議長の下で変わる米国の金融政策
ウォーシュ新体制がもたらす債務管理戦略とその構造的リスク

2026年3月17日

AIバブル懸念やプライベートクレジット市場の動揺、さらには地政学リスクなど、今後の市場を展望することは一層困難な状況になっている。1926年の創業から100周年を迎える老舗運用会社ルーミス・セイレスで債券運用を担当するマット・イーガン氏に、米国債券市場について語ってもらった。

ルーミス・セイレス ポートフォリオ・マネージャー兼フル・ディスクレション・チーム責任者 マット・イーガン氏

デュアルマンデートのバランスシフト

皆さんもよくご存じかと思いますが、FRBは「完全雇用」と「物価安定」という2つの大きな目標を掲げています。先の金曜日の時点では、FRBの方針がどちらに傾くのかということについてディベートをしていました。

我々としては、FRBは労働市場への懸念から少し離れて、雇用とインフレの間のリスクに関してはよりバランスの取れた方針に移行するのではないかと考えています。経済にモメンタムが形成されつつある中で、少なくともFRBはマーケットが想定しているよりも長くバランスの取れた方針を維持し、もしかするとインフレが再燃するかもしれないというリスクを少しヒントするような体制を取っていく可能性があると思います。

安定化装置としてのFRBの役割

現在のFRBは、安定化させるという役割についても考えているはずです。現在のようなショックが起こる時というのは、マーケットを安定化させるという役割が非常に重要になってきます。必要であれば流動性を提供し、米国経済を守っていくこともFRBの重要な役割です。石油価格のショックに関してはインフレへの一時的な影響と見ているようであり、経済の弱含みのサインが出てくれば、それを緩和するような策を取っていくと思います。

もう1つ、FRBの役割としてあまり議論のトピックに上がってこない重要な役割があります。それは、米国政府が持続可能なコストで資金調達を続けられるかどうかということです。現在、米国の財政赤字がGDP6%という持続できなさそうなレベルになっている中、この役割はとりわけ重要です。

ケビン・ウォーシュ新議長がもたらす新体制

おそらく5月に就任するであろう新しいFRB議長のケビン・ウォーシュ氏についてお話ししたいと思います。彼は議長になったら新しい体制を構築することを約束しています。金融市場におけるバランスシートを通しての活動をより縮小したいと考えており、また今後は生産性のブームが来ると確信しており、財務省との連携もより拡大させたいと考えています。

債務管理戦略の大転換:短期債シフト

この複雑な状況をまとめると、FRBはバランスシートの平均満期をより短くしたいと考えています。すでにその策は講じているのですが、これからもっとそのようにしていくでしょう。Tビルや短期の国債を積極的に買っていくことになると思います。

財務長官のスコット・ベセント氏はこの方針に非常に満足しています。というのも財務省としても大量の国債を発行していかなくてはならないからです。今後出てくる追加の発行は短期のもの、Tビルになるでしょう。こうしたオペレーションを通じて、債務の平均満期プロファイルはさらに引き下げられていきます。現在、債務の5分の1Tビルですが、今後数年間で30%に拡大すると見ています。リプライシングの速い他の債務も含めると、約3分の1の債務が短期金利の動向に非常にセンシティブになります。

政権の成長戦略と構造的リスク

政権のプランとしては、かなり経済の成長を促進させ、ホットなエコノミーにしたいと考えています。そして赤字対策として金利コストを下げるために平均の満期を短くし、AIによって生産性のブームが訪れてインフレを抑制していきたいということです。

リスクとしては、生産性の上昇に大きな賭けをしているわけですから、それが十分でなくインフレを抑えることができないということになった場合、FRBはインフレ圧力に反するような政策を取らなくてはいけないかもしれません。政府としても債務をロールオーバーする際により高い利回りで移行していかなくてはならず、引いては赤字が拡大してしまうかもしれないというリスクに直面しています。

私の見解では短期的にはこのプランはうまく機能すると思いますが、インフレは構造的にシステムの中に存在しています。私自身AIによって生産性が拡大するとは思っていますが、インフレを下げていけるほどの十分な生産性拡大にはならないのではないかという懸念があります。

債券ポートフォリオの運営:長期債に慎重姿勢

こうした状況の中で我々の債券ポートフォリオをどのようにマネージしているかですが、特に長期債に関してはマーケットはミスプライスしていると考えています。デュレーションに関しても慎重な見解を持っており、グローバルのアグリゲートなどの典型的なベンチマークと比べてもデュレーションは短くなっています。金利に関してもディフェンシブな見解をしており、10年債のフェアバリューは4.5%を上回る水準にあると考えています。