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春闘で確信高まる賃上げの持続性 
ついに進むか、「貯蓄から投資からの消費」

第一生命経済研究所・藤代氏が解き明かす「経済の舞台裏」
2026年3月13日
藤代 宏一 /  第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

春闘賃上げ率は2026年も5%を超える見込みです。これまで賃上げの持続性には懐疑的な目を向けられることもありました。しかし良い意味で予想が外れることで、「『貯蓄から投資』の流れの中で後回しされてきた『消費』にも底固さが見られるようになりそうだ」と、第一生命経済研究所の経済調査部で主席エコノミストの藤代宏一氏は指摘します。※本稿は、3月6日掲載の第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト、藤代宏一氏のレポート「連続賃上げが誘う『貯蓄から投資からの消費』」を抜粋・再編集したものです。

  • 日経平均株価は先行き12ヶ月57,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、政策金利は26年7月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう
  • FEDはFF金利を26年6月に3.5%まで引き下げた後、様子見に転じるだろう

注目点・経済指標等

○春闘賃上げ率は2026年も5%を超える見込みである。3月5日に連合が公表した賃上げ要求率は5.94%となり、2025年の6.09%をやや下回るものの、2024年の5.85%を上回る結果となった。労働組合の要求と実際の賃上げ率には一定の差異があることから、2025年の差異を基に2026年の賃上げ率を計算すると、5.1%程度となった。ここから判断すると、日本の一人あたり賃金を示す最も代表的な指標である、毎月勤労統計における一般労働者の所定内給与の伸びは現在の水準かそれ以上と想定される。春闘賃上げ率(要求段階)が加速するわけでもないのに「それ以上」としたのは、毎月勤労統計調査は特定の業種におけるサンプル要因から賃金の実勢を過小評価している可能性が指摘されているからである。仮にサンプル要因であるならば、2024年後半の基調である3%程度への再加速が見込まれる。



○こうした賃上げ機運の高まりもあってか、3月4日に発表された消費者態度指数は40.0へと2.1pt上昇した。3ヶ月平均値は9ヶ月連続の上昇であり、内閣府は基調判断を「改善に向けた動きがみられる」に上方修正した。背景にあるのは、ガソリンの旧暫定税率の廃止もあって物価上昇に一服感がみられていることであろう。購買頻度が高く、食生活を営む上で重要なお米の値段が落ち着いてきたことも寄与したとみられる。またトランプ関税の影響が昨春に懸念されたほどの打撃となっていないことも大きいとみられる。



○消費者態度指数を構成する「収入の増え方」は42.5であった。2025年4月の35.7を底とする回復は明白であるが、コロナ期以前の2019年平均である42.8には届いていない。

○2023年以降の賃上げは、この間の企業収益拡大もさることながら、人手不足に起因する構造的要因が強く効いているため、持続性が高いとの見方が多く、筆者もそう判断している。一方、マクロ経済に対する深い知識を持つ特定の人々を除くと、賃上げの持続性に懐疑的な人は多いだろう。「収入の増え方」の水準が低い原因として、「賃上げは一時的な幸運」と冷めた受け止めをしている人々が相当数存在することが指摘できる。

○事実、2023年~2025年央においては、所得の増加に伴って平均消費性向が低下した。振れの大きい家計調査を基に算出しているため幅をもって解釈する必要があるが、この裏には「賃上げは一時的なので消費はせず貯蓄・投資に回そう」という消費者行動が浮かび上がる。巷ではNISA貧乏という造語も誕生し30代以下の層を中心に、投資を優先して消費を後回しにする消費者行動が注目された。



○もっとも、2025年後半以降は株価上昇や高市政権への期待感もあってか、平均消費性向には底打ち感がみられる。その点、2026年春闘賃上げ率が安心感のある結果に落ち着きそうなことは朗報。賃上げは一時的であるとして、賃上げの持続性に懐疑的な印象を抱いていた家計からすれば、良い意味で予想は外れる。もちろん原油価格の急騰は要注意だが、2026年の個人消費は底堅さを増すのではないか。

藤代 宏一

 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト

2005年に第一生命保険に入社し、2008年にみずほ証券へ出向。2010年に第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向。2年間にわたり経済財政白書の執筆、月例経済報告の作成を担当。2012年に第一生命経済研究所に帰任。その後、第一生命保険より転籍し、早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)。2023年4月より現職。
参議院予算委員会調査室客員調査員(2018年)/日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)