AIバブル懸念やプライベートクレジット市場の動揺、さらには地政学リスクなど、今後の市場を展望することは一層困難な状況になっている。1926年の創業から100周年を迎える老舗運用会社ルーミス・セイレスで債券運用を担当するデイビッド・ローリー氏に、グローバルマクロ経済の見通しについて語ってもらった。

ルーミス・セイレス ポートフォリオ・マネージャー兼グローバル債券チーム共同責任者 デイビッド・ローリー氏
年初に加速していた世界経済の成長エンジン
年初の時点で、多くの国において経済成長は加速していました。そしてそれによって世界の投資家に提供できる投資機会も拡大していました。こうした動きは債券市場、株式市場、為替市場のいずれにも大きな影響を与えるものです。
成長のエンジンは皆さんにとっても明らかでしょう。米国ではAI分野における設備投資の拡大と技術競争の激化が経済を牽引しています。欧州では国防費の増大が投資意欲再燃のカタリストとなっており、これは特にドイツで顕著ですが、ドイツに限ったことではありません。昨年の関税ショックについても、貿易パターンは崩壊したのではなく変化しただけであり、多くの国で貿易はむしろ加速を続けています。
米テック株偏重のポートフォリオが見逃していた投資機会
しかしながら、多くの大手機関投資家はこうした世界的な成長拡大に対するポジションを構築できていませんでした。何年も続いた世界的な低成長を背景に、投資家はポートフォリオを「米国テック企業の収益性拡大」という一つのパワフルなストーリーに集中させてきたのです。
米国のハイテク成長株に過剰投資をしていたということは、それ以外の投資機会を見逃していたことを意味します。従来の戦略が今後もうまく機能するかもしれませんが、将来AIセクターの収益を誰が実際に享受するのかについては、かなり不透明感が増しています。
ボラティリティの「吸収者」から「発生源」に変わった米国
同時に、地政学的な環境の変化が投資家のセンチメントに新たな課題を突きつけています。かつて米国はショック発生時にそのクッション役を果たす「ボラティリティの吸収者」と見なされていました。しかし現在では、米国自身がボラティリティを生み出す側になっています。特にこの週末に起こったことはまさにそうでした。
昨晩寝た時、そして今朝起きた時のマーケット状況ですが、円は157円、ブレント原油は79ドルでした。この水準のまま終わるのであれば、最初の楽観的なストーリーを話し続けることはできると思います。しかし、ペルシャ湾の石油・ガスの供給が大きく、かつ長期にわたって混乱するようなことがあれば、まったく異なるマクロストーリーを語らなければなりません。
2つのシナリオ:ドル安と分散投資 vs. エネルギー危機
私から皆さまにお伝えしたい最初のシナリオは、世界経済の成長が加速し、投資機会が拡大を続けるというものです。この場合、投資家は米国で利益確定を行い、より幅広い機会を求めて分散投資を進めるため、ドル安の展開が見込まれます。
我々は現在、こうしたトレンドから生まれるチャンスを捉えられるようなポートフォリオのポジションにしています。そして状況の混乱が抑制されるという確信が十分に得られた時には、さらに戦略を強化していく方針です。
慎重かつニュートラルなポートフォリオ運営
ただし、もう少し状況が明確に見えてくるまでは、グローバルのクレジットポートフォリオにおけるポジションはより慎重に、そしてニュートラルなポジションにしていくつもりです。この混乱によるダメージが世界のエネルギー市場やそれに依存する国だけに限定されていると分かるまでは、そのような方針でいく考えです。