2025年9月に日興アセットマネジメントから社名変更したアモーヴァ・アセットマネジメントは、社名変更後初めてとなる投資セミナーを10月21日に開催した。FOREWORDの開催は毎年恒例となっているが、今回は新生アモーヴァのセミナーに相応しく、冒頭でステファニー・ドゥルーズ社長兼CEOから経営戦略の説明、さらにマーク・E・ストックル専務執行役員兼CIOより同社の運用力の強化についての説明があり、続いて、定番となっている同社神山直樹チーフ・ストラテジストによる「グローバル経済・市場の見通しと投資戦略」と題した基調講演が行われた。
後半は同社グローバル株式ポートフォリオ・マネージャー イアン・フルトン氏によるグローバル株式の講演や、最後は同社提携先である仏ティケオー・キャピタル トマ・フリードベルジェ共同CIOによるビデオでのプライベートアセット投資に関する講演があった。
当日はDB関係者を主体に約70名が参加、会場は満席に近い状態でセミナーに対する関心の高さをうかがえた。
1「アモーヴァ・アセットの経営戦略」

アモーヴァ・アセットマネジメント 代表取締役社長兼CEO ステファニー・ドゥルーズ氏
社名変更について
私たちは9月1日に社名をアモーヴァ・アセットマネジメントに変更しました。この社名変更は、社員主導で進められました。アモーヴァは当社のエッセンスを体現する造語であり、AM(資産運用)、MOVE(進歩的)、NOVA(イノベーション) が含まれる言葉として、AMOVAにつながりました。社名は変更されましたが、私たちの株主構成、経営陣、そしてお客様へのコミットメントは変わっておりません。
会社概要
私たちは、10地域にわたって25の国籍を持つ約1,000名の従業員を擁しています。また、力強いインハウス運用力を支える220名以上の投資プロフェッショナルがおり、さらに7つのパートナーシップが当社にさらなる能力をもたらしています。
ミッション、プリンシプル、バリュー
私たちのミッション(使命)は、皆様をはじめとするステークホルダーに対して、「先進的な投資ソリューションで明るい未来を共創する」というものです。このミッションを支えるプリンシプル(原則)として、「お客様第一主義」、「真の信頼関係」、「継続的なイノベーション」、そして「意義あるパフォーマンス」の4つを掲げています。従業員レベルのバリュー(行動基準)としては、「誠実な行動」、「協働の推進」、「果敢な挑戦」、そして「卓越の追求」を掲げています。
会社の歴史
当社は65年以上の歴史を持っています。この歴史は、私たちが常に自社の能力を使ったオーガニック(自律的)成長と、外部パートナーを見つけるインオーガニック(非自律的)成長の両方に取り組んできたことを示しています。オーガニックには、世界中にオフィスを設立してきました。最近では、ドイツ、オランダ、アイルランドに拠点を開設しました。同時に、私たちと合致する企業の株式を一部取得するというインオーガニックなステップも踏んできました。このオーガニックとインオーガニックの柔軟性が、私たちの成功の一部となっています。
グローバルプレゼンス
アモーヴァのオフィスで最大のハブは日本、シンガポール、EMEAになります。戦略的パートナーは、最新のチョコレートファイナンス(シンガポール)を加えて7社になります。他の6社は、中国の融通基金管理有限公司(ロントン)、マレーシアのAHAM アセットマネジメント、オーストラリアのヤラ・キャピタル・マネジメント、米国のアーク・インベストメント・マネジメント、そして、近年新しくパートナーシップを締結し、私たちのグローバル成長戦略の一部となっている英ロンドンのオズモシス、そしてフランスのティケオー・キャピタルです。ティケオーとはシンガポールでプライベートアセットのジョイントベンチャーを持っています。
ティケオーとのパートナーシップ
ティケオーとのパートナーシップについて簡単に説明したいと思います。同社は卓越した企業です。従業員が株式の過半数を所有しており、顧客とは常にセイムボート(同じ船=境遇)となり、常にスキン・イン・ザ・ゲーム(自己資金投資)の姿勢を持っています。
私たちがティケオーとチームを組んだのは、お客様と共に成長するパートナーが欲しかったからです。このパートナーシップには3つの柱があります。同社との利害を一致させるために少数株式を保有すること、同社の既存戦略の販売、そしてシンガポールでのジョイントベンチャーです。このジョイントベンチャーでは、彼らの優れたヨーロッパでの商品のアジア版を共同で組成することを考えています。例えば、アジアクレジット、アジア脱炭素化などです。
グローバル成長戦略
最後に、私たちのグローバル成長戦略についていくつかお話しします。先ほど述べたように、私たちはオーガニックとインオーガニックの成長要素を戦略に組み合わせることに長けてきました。2022年より展開しているグローバル成長戦略は、その強みを活かしたものです。オーガニックには、各国で新規オフィスを開設し、グローバル投資グループ内で新しい投資能力を創出します。インオーガニックには、状況に応じて完全買収または少数株式取得を通じてパートナーシップを締結します。
インオーガニックについては、6つの領域に焦点を当てています。うち3つは地理的要件で、ヨーロッパ、東南アジア、米国です。ここでは、事業展開を加速させるとともに補完的な投資能力を提供する企業を見つけたいと考えています。これらのパートナーシップについては、過半数株式の取得を目指します。また、残る3つは運用ケイパビリティ面であり、ESG/サステナブル投資、ETF、プライベートアセットの3つの領域です。
これら6つのインオーガニック優先事項は、当社の形を変えることになります。これらは6つの個別の機会となる可能性もあれば、1つのパートナーシップが複数の領域を満たす可能性もありますが、既に2件実現しています。ロンドンのオズモシスとのパートナーシップはESG/サステナブル投資のボックスを満たし、ティケオーとのパートナーシップはプライベートアセットのボックスを満たしています。これらはグローバル成長戦略の開始後に行われたものです。
次のパートナーシップを楽しみにしており、それにより当社をさらに強化していきます。しかし、これらの目的はお客様により多くの戦略と、資産クラスや地域にわたる多様な機会を提供することにあります。私たちは、皆様への投資ソリューションの提供に引き続き注力してまいります。
2「アモーヴァ・アセットの運用力の強化」

アモーヴァ・アセットマネジメント 専務執行役員兼CIO マーク・E・ストックル氏
キャリアと企業の共通点
私はこれまでのキャリアにおいて、いくつかのグローバルな資産運用会社で働いてきました。これらの企業には共通する特徴があり、それらは非常に重要だと考えています。第一に、自社の歴史を理解していることです。歴史を知りそれを尊重し、決して忘れることがありません。企業にとってもDNAは重要だと本当に思います。第二に、提供する各商品について明確に表現された哲学とプロセスを持っていることです。第三に、リスク管理に細心の注意を払っていることです。そして最後に、顧客と明確かつ効果的にコミュニケーションを取っていることです。アモーヴァへの入社を考えていた時に、他のグローバルで成功している資産運用会社と同様に、これらすべての要件を満たしているという事実は、私にとって非常に魅力的でした。
CIO就任後、8か月間の雑感
まず、当社には才能にあふれた運用のプロが数多くいます。後で講演するイアン・フルトンと彼が属するエジンバラのグローバル株式運用チームは本当に優秀です。2点目は、各チームが哲学とプロセスを確りと持っているということです。資産運用の現場においてそれがチームのDNAに組みまれており、その通り実行できているというのは一般的ではありません。3点目はステファニーが話していたグローバル成長戦略についてです。CIO就任以前に社外取締役の立場でそれを見たとき、それは非常によく練られた計画でした。今はシニアマネジメントとしてそれを実践しているところです。
また、重要なのは、取締役会だけでなく、親会社の全面的な支援を受けているという事実です。取締役会と親会社の両方の支援があることで、この優れた成長戦略の実行がより確実になると思います。
CIOとして注力している分野
私が取り組もうとしているのは、ベストインクラスを目指すにあたり、地域によって違う様々なやり方、カルチャーの違いを管理するということです。時間をかければ、こうした文化の違いを管理することが当社の優位点になってくると考えています。
また、チームと一緒に時間を過ごして、専門性がどこにあるのか、それをどこで活用できるかを把握しようと努めています。優れたチームの中でさらに可能性のあるチームを探すということです。一例としてクオンツチームを挙げたいと思います。ストラクチャーや規律が確りしています。クオンツチームでは既存の日本株のモデルを使って新興国市場に適用するために必要な調整を行っているところです。
ここで皆様と共有する時間はとても重要です。何が私たちをドライブさせているのかを理解していただくことも重要ですし、皆様が私たちに託してくださる資金を最善の方法で運用するよう努力していること、タイムリーかつ明確にコミュニケーションを取っていることを、理解していただくことが重要です。また、単に株式や債券を選ぶだけでなく、良好なパフォーマンスをお届けすることはもちろん、皆様が誇りに思えるような体験もお届けすることが重要なのです。
本日はアモーヴァの運用部門についてお話しする時間をいただき、有難うございました。