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ドル円相場150円回復の背景とは、ドイツ財政拡張の余波と投機筋の円買い一服で明らかになった円の現状

「内田稔教授のマーケットトーク」をWeb記事で
2025年4月2日
内田 稔 /  高千穂大学 教授/FDAlco 外国為替アナリスト

当シリーズでは、高千穂大学の商学部教授で三菱UFJ銀行の外国為替のチーフアナリストを務めた内田稔氏に、為替を中心に金融市場の見通しや注目のニュースをウィークリーで解説してもらう。 ※この記事は3月27日 に配信された「内田稔教授のマーケットトーク 【第24回】ドル円150円台回復の背景と市場が懸念するもの」を再編集しています。

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24回のマーケットトークです。

今回のテーマは次の通りです。

出所:内田氏

ドル円相場が150円台に回復しました。まずはこの背景を簡単に振り返ります。次に今マーケットが何を懸念しているかについても見ていきます。特に昨晩トランプ大統領が関税を発表した後の市場の動きが私としては非常に重要だと思っております。最後に来週のポイントを解説します。

過去1カ月のドル円の動きです。ご覧の通り151円台に乗せたところから3月上旬にかけて146円台までドル安円高が進みました。ただ、過去のマーケットトークでもお伝えした通り、必ずしも円が強くなっていたわけではありません。

もちろん、投機的な円買いが進んでいた部分はありましたが、いろいろな通貨ペアに対してみると円は決して強いわけではなく、どちらかと言えばドイツの財政拡張の話を受けたユーロ高ドル安が波及したという面があったと考えられます。

そして今週、ドル円は150円台を回復しました。足元では火曜日に151円手前までドル円相場はドル高円安になっており、足踏みという状況です。先ほど説明した通り、ドル円の背景にはユーロドルの動きがありました。具体的にどのような動きかについても振り返りたいと思います。

過去1カ月間のドイツ長期金利(赤線)とユーロドル(青線)をまとめたものです。223日にドイツで総選挙がありました。そこで財政拡張という話が出て、ドイツの長期金利が上昇し、ユーロ高ドル安になりました。その動きが今は少し一服して、ユーロドル相場もユーロ安ドル高方向に少し下がっているという動きが見られます。

ユーロドルはユーロが主語の通貨ペアですので、左側の縦軸、上に行けばユーロ高ドル安、下がユーロ安ドル高です。ドイツの長期金利は3%には届かずに今2.7%台まで少し下がってきているという状態です。

ただ、ドイツの財政拡張は歴史的な大転換でもあります。選挙前の水準であるユーロドル1.05割れ、長期金利2.4%という水準からはかなり高いところに位置しています。材料が完全に全部消化され尽くしたということではないと思います。ただ一旦の動きとしては収まって、ここのユーロ安ドル高、これがじわりと為替に波及した。これがまず一つ目のドル円相場150円の要因だと考えられます。

その証拠に、というと少し大げさかもしれませんが、気になる動きをまとめました。このグラフはドル指数(赤)ユーロドル(青)の過去1カ月の動向をまとめたものになります。

赤のユーロドルが財政拡張の話で一気にユーロ高になりました。そして今は少しユーロ安ドル高になっている、という動きをしています。対するドル指数は、ユーロと円とポンド、カナダドルとスウェーデンクローナ、スイスフラン、この6通貨に対するドルの総合的な動きを示しているものです。

ただ、ユーロドルがドル指数は通貨ごとに重みづけがなされており約58%は対ユーロでのドルの動きが反映されるようになっています。そのため、赤のドル指数と青のユーロドルは上下を鏡で映したような動きになっています。

要はユーロ安ドル高の動きによってドル指数がドル安に歯止めがかかって少し持ち直しており、これによってドル高、ドル円も150円に乗ったわけです。

ドル円相場150円台回復の要因

ドル円相場150円のもう一つの要因についても見ていきましょう。端的に言えば円が強いわけでは全くない、ということに尽きると思います。

グラフはポンド円、カナダドル円とスイスフラン円。これらクロス円の過去1カ月の動きをまとめたものです。赤いポンド円と、緑色のスイスフラン円は右軸で見てください。対して青色のカナダドル円は左側をみてください。ご覧になるとお分かりの通り1カ月前よりも全通貨ペア上方向、つまり他通貨高円安の全面安になっています。

カナダは関税の影響が懸念されたタイミングでカナダドル安円高方向に大きく下がりました。しかし、それでもその後の上げ幅の方が大きくなっています。スイスに至ってはスイス中央銀行が321日に政策金利を0.25%まで下げ、日本と同程度ないしは日本よりも金利が低い状態ですが、スイスフランもスイス高円安になっている状況です。

ですから、ドル円だけを見ていると147円を割ったときに「少し円高が怖いな」という感覚もあったと思うのですが、幅広い通貨に対して見ると、ドル以外の通貨に対して円はほとんど強くなっておらず。やっぱり弱いままという状況でした。

過去のマーケットトークで何度かご説明している通り金利からインフレ率を差し引いた実質金利が大幅なマイナス圏であるという円の最大の弱点が解消されない限り、大掛かりな円高への回帰は考えにくいのではないかと考えています。

いずれにせよ円は全く強くなっていません。たまたまドルがちょっとユーロに押されて弱くなっていたタイミングに歴史的な投機筋の円買いによって147円を割ったところがやっとだったというのが、ここ1カ月の動きだったと言えると思います。

こちらは先週金曜日の終わり値と3271630分時点の主要通貨の対ドル変化率を比べたものです。ドルに対して上昇したのはスウェーデンクローナとカナダドルでした。対して、ポンドよりも右側の通貨はドルに対して下落した通貨ということになります。ご覧の通りで円は一番右側に位置していますから、円が弱いということになります。

ここまでで改めて、今回の議題の一つ目である150円回復の背景要因が何だったかをまとめたいと思います。その一つ目はドイツの財政拡張による、ユーロ高の一服によってドルが持ち直したことです。もう二つ目は結局円が全く強くなかったことです。現状、当期筋の円買いも一服していると思われます。投機筋の円買いが一巡すると、やはり円はたちまちに弱くなってしまったということだと考えられます。

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後編:【スタグフレーション懸念再燃の兆しが見られたワケ、4月4日発表の雇用統計の注目ポイントを徹底解説】では、3月31日週の注目ポイントなどを解説していきます。

「内田稔教授のマーケットトーク」はYouTubeからもご覧いただけます。

公式チャンネルと3月27日 公開分はこちらから

内田 稔

 高千穂大学 教授/FDAlco 外国為替アナリスト

1993年慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2007年より外国為替のリサーチを担当。2011年4月からチーフアナリストとしてハウスビューの策定を統括。J-Money誌(旧ユーロマネー誌日本語版)の東京外国為替市場調査では、2013年より9年連続アナリスト個人ランキング部門第1位。2022年4月より高千穂大学に転じ、国際金融論や専門ゼミを担当。また、株式会社FDAlcoの為替アナリストとして為替市場の調査や分析といった実務を継続する傍らロイターコラム「外国為替フォーラム」、テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、News Picks等でも情報発信中。そのほか公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員も兼任。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会認定アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本金融学会会員、日本ファイナンス学会会員、経済学修士(京都産業大学)

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