2024年の日本経済を振り返ると、春闘における賃上げ率は33年ぶりの高水準となったほか、日銀が金融政策の正常化に踏み切り17年ぶりとなる利上げを実施するなど、象徴的な1年となった。そして25年に入ってからも日銀が短期の誘導目標金利を0.5%に引き上げることを決定、引き続き日本経済の先行きと金融政策の見通しへの注目度は高い状況が続いている。大きな転換点を迎えた日本の経済・物価・金融政策をどのように見通していけばよいのか、金融業界の第一線で活躍する有識者たちのパネルディスカッションを3回にわたってレポートした。
※当記事は2月6日(木)に行われた「ナウキャスト創業10周年パーティー」内のセッション「日本の金融経済の現状と先行き」を採録したものです。
パネリスト
キャプラ・インベスト・マネジメント 共同創業パートナー
浅井 将雄氏
ゴールドマン・サックス証券 経済調査シニアアドバイザー
大谷 聡氏
三井住友銀行 副頭取執行役員
小池 正道氏
内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)
林 伴子氏
東京大学大学院経済学研究科教授 ナウキャスト創業者
渡辺 努氏
追加利上げのタイミング
コンセンサスの7月と12月は「妥当」
――2025年の金融政策の先行きはどのようにお考えでしょうか。また金融政策に影響をもたらすものとして注視すべきポイントについてもお聞かせください。浅井 日銀金融政策を巡る市場のコンセンサスは、向こう1年間で2回、25bpずつの利上げです。1月に利上げが行われたばかりですので、この見通しが実現するのであれば、次回の利上げは半年後の7月、続いて年末の12月もしくは翌年1月に行われると予想されます。日銀の物価見通しやGDP見通しを考慮すると、7月と12月前後に2回の利上げが行われるという予想は妥当であり、実現する可能性が高いと考えています。
ただし、今後の金融政策を占う上ではさまざまな要因を注視していく必要があります。 日銀の金融政策は伝統的に「金利」と「量」の両面から考察されてきました。「量」を象徴するバランスシートは現在、非常に大きな規模となっています。日銀は3カ月ごとに4000億円の国債買い入れを減額するオペレーションを行っていますが、その規模や方向性は今後の金融政策に大きな影響を与えます。 特に今春、1年半後のバランスシートのあり方についての議論が行われる予定であり、これが大きな焦点となるでしょう。日銀が適正なバランスシート規模をどのように判断し、国債購入をどの程度減額していくのか。3~4月の議論、そして恐らく7月になされるであろう政策決定に注目する必要があります。
もう一つの注目すべき点は、景気の下振れリスクです。7月には参議院選挙が予定されており、選挙結果が金融政策のタイミングに影響を与える可能性があります。参院選後まで利上げが延期されることも考慮する必要があるでしょう。
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