セミナーレポート岐路に立つプライベートアセット【前編】投資環境の現状と今後
伝統資産とは異なる特性を持つプライベートアセット(PA)は国内投資家の間でも広く浸透した。ただ近年、海外金利の上昇や為替ヘッジコストの増加、経済サイクルの変化などPAを取り巻く投資環境はめまぐるしく変化している。足元までの環境変化と今後のマーケット動向は、PAの運用にどのような影響をもたらすのか。マーサージャパンでウェルス・コンサルティング本部代表の五藤智也氏を招き、「オルイン」シニアフェローの小倉邦彦と語り合ってもらった。
前編では「オルイン」の小倉シニアフェローのコメントから、PAを取り巻く投資環境について現状を整理した上で、2024年以降の注目ポイントや留意点をまとめた。
※本記事は2023年12月7日開催の「オルイン機関投資家フォーラム」でのクロージングセッション「岐路に立つプライベートアセット運用の再点検と新たな投資機会」の内容をもとに採録しました。
インフレや利上げ、ヘッジコストがPAにもたらす影響は
PAと一口に言っても多くの種類があり特性も異なります。そこでPAの中でも代表的な、➀不動産、②インフラ、③プライベートデット、④プライベートエクイティの4資産をピックアップし、それぞれ投資環境の現状を見ていきます。
➀不動産については、海外と国内で状況が大きく異なっているのが特徴です。
まず海外不動産は、近年のインフレや金利上昇による影響が最も深刻です。特に米国では金利の急上昇を受けて不動産価格が全体的に低下していますし、かつて勢いのあったオフィス市場もコロナ禍以降のリモートワークの浸透によって低調となりました。実際、コアの私募不動産オープンエンド型ファンドのベンチマーク「NFI-ODCE」を見てみると、2022年第4四半期から直近の23年第3四半期までマイナスが続いており、今後どこまで調整が続くかというのは市場関係者のもっぱらの関心事となっています。
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