2022年から続いた世界的な物価上昇にようやく落ち着きがみられてきたが、今後の世界経済はどのような道筋を辿っていくだろうか。また、それによって日本銀行の金融政策はどのように展望できるだろうか。野村総合研究所でエグゼクティブ・エコノミストを務める木内登英氏に予測を語ってもらった。
第1弾となる今回は、日銀の金融政策を見通すための重要な指標となる世界的な物価情勢を分析した上で、すでにインフレ終了による経済的リスクが顕在化しつつある中国と米国の現状について取り上げる。※本記事は2023年12月7日開催の「オルイン機関投資家フォーラム」でのセッション「日銀金融政策の評価と今後の展望」の内容をもとに採録しました。
いよいよ終わる主要国の物価高騰
世界的なインフレにピーク感が出てきました。消費者物価指数を見ると、米国では2022年から低下傾向が続いていますし、欧州でもいよいよ落ち着くのではないかという感触です。そして日本でも23年11月の東京都区部のインフレ率は予想外に下振れました。金融市場でもインフレ率は落ち着く方向にあると受け入れられ始めており、金利も下がる方向に固まりつつあります。
今後のインフレ率の推移を予測すると、2025年から26年くらいまでに元の水準へ下がるでしょう。過去の例では、インフレ率は3年ほどかけて加速前の水準に戻っていることがわかるためです。コロナショックやウクライナ問題をきっかけに世界がインフレ期に入ったとして今後も金利は高止まりするとの見方もありますが、私は過去と同じように加速する前の水準まで下がっていくと考えます。
さらに言えば、インフレ率は元の水準に戻ったあと、リセッションにより下振れしてしまう傾向もあるのです。世界的な景気減速が懸念される中、すでにインフレ終了による経済腰折れリスクが顕在化し始めているのが中国と米国です。
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