大和総研・塩村賢史フェローの調査レポート 発行体視点で考えるTOPIX改革
要約
■2025 年1月末に完了した第一段階のTOPIXの見直しにより、TOPIX構成銘柄は見直し前の約2,200銘柄から約1,700銘柄に絞り込まれた。2026年10月に始まる第二段階の見直しにより、TOPIXの構成銘柄は浮動株時価総額などで毎年評価され、1,000銘柄程度に絞り込まれる可能性がある。
■第一段階のTOPIX見直しの際、除外対象となった銘柄については、10回に分けて10%ずつウエイトが引き下げられ、ウエイト低減に合わせて、株価は TOPIX を大きくアンダーパフォームした。これから行われる第二段階の見直しで除外対象となった銘柄は、2026 年10 月から8回に分けて12.5%ずつウエイトが低減されていくことになる。
■TOPIX に連動するパッシブ運用の資産規模は、2024年3月末時点でTOPIX構成銘柄の発行済株式時価総額の約11.8%に相当しているとみられる。企業がTOPIXの構成銘柄から外れることになれば、その株主構成も変わることになり、IR(Investor Relations)や SR(Shareholder Relations)にも影響する。アクティブ投資家を開拓するとしても、その投資家が TOPIX をベンチマークとする場合、オフベンチマーク(TOPIX 構成銘柄以外)の銘柄への投資には制約があることもある。
■TOPIX から除外されると、株価にはネガティブな影響が予想される上に、一度除外されると再度組み入れられるための条件が継続採用基準より高く設定されている。発行体企業としては、2027年10月の再評価のタイミングで除外対象とならないことが重要であり、取り得る対応策は、浮動株比率の向上や株価上昇などを通じて、浮動株時価総額を引き上げることしかない。
TOPIX 見直しの概要と現状
現在、日本取引所グループの JPX 総研において、パッシブ運用の市場ベンチマークとして広く利用され、多額の連動資産を有する TOPIX について、連続性を確保しつつ、投資対象としての機能性を高める見直しが行われている。
既に2025年1月末に完了した第一段階の見直しでは、流通株式時価総額100億円未満の銘柄や売買代金回転率が0.2未満の銘柄などがTOPIXの組入れから除外された。その結果、TOPIXの組入れ銘柄数は、見直し前の約2,200銘柄(2022年4月)から、見直し後(2025年1月)には約1,700 銘柄まで絞り込まれている。
第二段階の⾒直しでは、指数の連続性を確保しつつ、全市場区分(プライム・スタンダード・グロースの各市場)を対象として、流動性をより重視して銘柄の定期入替を実施するなど、広範網羅性や投資対象としての機能性を更に高める見直しが行われる(図表1)。
初回の定期入替は2026年10月に実施されるが、市場影響を緩和する観点から、四半期毎に8 回に分けて12.5%ずつウエイトが低減(※1)され、2028年7月に除外対象銘柄はウエイトが0%となり、完全に TOPIX から外れることになる。第一段階の見直しと同様に企業の経営改善の取組みを反映するために、2027 年 10 月に再評価が行われ、継続基準(年間売買代金回転率:0.14以上、浮動株時価総額の累積比率:上位 97%以内)を満たす銘柄については、移行係数が 0.5で維持され、ウエイト低減が停止されることになる(図表2)。

2025 年 8 月最終営業日を基準日としたJPX総研の試算では、市場カバー率をほぼ維持しながらも、銘柄数が約1,700銘柄から約1,100 銘柄に絞られることで、浮動株時価総額や1日あたり売買代金の中央値が約2倍となり、流動性が向上する見通しが示されている(図表3)。 こ の見直しにより、世界の主要インデックスプロバイダーである米国のMSCIや英国のFTSEが算出する世界的な All-Cap 指数(大型株から小型株まで幅広く組み入れる時価総額加重指数)などの銘柄数(※2)や流動性に近づくことになる。
ただし、TOPIX の構成銘柄数については、今後の株式市場の物色動向や企業の浮動株比率を高める動きなどにより、大きく変わる可能性がある点には留意したい。現に、2025 年 1 月 15日時点のデータに基づいた大和証券による試算(※3)では、TOPIXの構成銘柄数は約1,000銘柄になる見通しが示されている。見直し後のTOPIXの組入基準となる浮動株時価総額の累積比率96%と97%のラインは、時価総額上位銘柄の株価が大幅に上昇したことにより、このところ上昇傾向にあることがわかる(図表4)。また、この図では、96%ラインと97%ラインの間に約100社の企業がひしめき合っている状況であり、ほんのわずかな浮動株時価総額の差が TOPIX 採用の明暗を分けることになる。
第一段階のTOPIX見直しの株価インパクト
次にこれから実施される第二段階の TOPIX の見直しによるインパクトを考えるにあたり、第一段階の見直しがどのような株価インパクトをもたらしたのかについて、確認をしたい。なお、第一段階のTOPIXの見直しは、2022年10月7日にJPXのウェブサイトにて「TOPIXにおける段階的ウエイト低減銘柄」が公表され、2022年10月末から四半期毎に10回に分けて10%ずつウエイトが落とされていったのに対して、第二段階では、四半期毎に8回に分けて12.5%ずつウエイトが落とされていくことになる。したがって、第二段階の各回のインパクトは、第一段階よりもやや大きくなる可能性がある点は留意されたい。
インデックスの銘柄入れ替えに伴う売買については、当該指数をベンチマークとするパッシブファンド(※4)は、トラッキングエラーを抑制する観点からインデックスの変更日(リバランス日)に売買を実施することになり、売買のインパクトもリバランス前営業日に大きくなる。図表5では、第一段階の見直しでTOPIXから最終的に除外対象となった439銘柄(※5)に等金額で投資した場合の、全10回のリバランス日における対TOPIXの超過リターンを示している。段階的にウエイトが低減される度にネガティブな影響を受けていることや、2023 年 10 月の再判定の結果、TOPIXからの除外が確定して以降のマイナス幅が特に大きいことが確認された。
次にTOPIX から最終的に除外された銘柄のうち、2020年以降一貫して上場している394銘柄の売買代金の合計について、TOPIX 採用銘柄の売買代金の合計に対する比率を確認した(図表6)。このところ、株式市場全体が活況を呈していることから、TOPIX から除外された銘柄についても売買代金は増加傾向にあるものの、TOPIX 構成銘柄全体との比較でみると長期的に低下トレンドにあり、明確なトレンドの転換は確認されなかった。インデックスに入り続けている限り株を保有し続けるパッシブファンドの存在は、リバランスのタイミングを除けば、日々の流動性に特に影響を与えるものではないということであろう。
TOPIX 見直しは企業のIRやSRにも影響
TOPIX の見直しは、除外対象となった企業の株価に株式需給面でマイナスの影響を及ぼすだけでなく、当該企業(発行体)のIR(Investor Relations)やSR(Shareholder Relations)活動にも影響を与えることになる。TOPIX をベンチマークとしたパッシブファンドには、公的年金や確定給付型の企業年金の運用のみならず、NISAやiDeCoなどでも多く投資されている。日本取引所グループのウェブサイト(※6)によれば、TOPIXを投資対象とするETF及び年金運用等の連動運用資産は、2024年3月末時点で約110兆円とされており、それは同時期のTOPIX構成銘柄の発行済株式時価総額の約 11.8%に相当する。直近においても、TOPIX 連動の投資信託の純資産総額は増加傾向を続けており、TOPIX の構成銘柄から外れることになれば、株主構成も変わることになる(図表7)。
パッシブ運用の議決権行使については、一部には形式的だという批判もあるが、パッシブ投資家はインデックスに組み入れられている限り保有し続ける超長期投資家として、エンゲージメントや議決権行使判断を行う。長期的な企業の成長を阻害しかねない株主提案がなされた場合などには、発行体側の主張にも耳を傾ける投資家でもある。安定的な企業経営を続けるうえで、パッシブ投資家が抜けた後にどのような投資家が株主になるかによって、発行体の株主総会運営にも影響が及ぶことになる。パッシブ投資家が減少し、個人投資家などが受け皿となった場合には、議決権行使率にもネガティブな影響を与える可能性がある。
また、パッシブ投資家の代わりにアクティブ投資家を開拓しようとしても、TOPIX に組み入れられていないことがネガティブに働く。それは、TOPIX をマネジャーベンチマークとするアクティブファンドにとって、オフベンチマークの銘柄(ベンチマークである TOPIX に組み入れられていない銘柄)に投資をすることについては、リスク管理上の制約が設けられていることがあるからである。TOPIX の見直しの第一段階で TOPIX から除外された銘柄のパフォーマンスが除外後も低迷し続けていることは、そのようなことが反映された結果なのかもしれない。TOPIX の段階的ウエイト低減銘柄になった後に上場廃止を選択した企業は少なくない。
TOPIX 継続採用のために企業ができること
ESG インデックスなどとは異なり、浮動株時価総額加重型インデックスである TOPIX に組み入れられ続けるために企業ができることはただ一つ、浮動株時価総額を上げることである。それは浮動株比率を高めることと、発行済時価総額を上げることに分解できる。
浮動株比率は「1-固定株比率」で計算されるため、浮動株比率を高めるためには、固定株比率を引き下げる必要があるが、主な対応策としては、オーナー企業であればその持ち分の一部を売り出す、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)に売出しをお願いする、持合解消をする、というようなことが考えられよう(図表 8)。しかし、3 月期決算企業の場合、浮動株比率に反映されるのは同年の10月最終営業日となるため、今すぐに何らかの対応をしたとしても、TOPIX見直し第二段階の最初のタイミング(基準日は2026年8月最終営業日、実施日は2026年10月最終営業日)には間に合わない。ただ、2027年10月に実施される再評価のタイミングには、反映させることが可能である。
王道としては、やはり時価総額(株価)を引き上げることになる。それも絶対的な株価水準ではなく、相対的に他社よりも引き上げて、TOPIX の継続採用基準である浮動株時価総額の累積97%よりも上位に位置付けられるように収益を上げること、投資家の評価を獲得していくことが必要となる。一度、TOPIXから外れると、TOPIXに再度組み入れられるためには、パッシブ投資家の売りという逆境を乗り越えた上で、浮動株時価総額の累積96%よりも上位に入らなければならないため(除外基準の 97%よりも厳しい条件)、ハードルは一気に上がることになる。TOPIX 継続採用の当落線上にある企業にとって、2027年10月の再評価は非常に重要な局面となる。
※1 第一段階のTOPIX見直しでは四半期毎に10回に分けて10%ずつウエイトが低減された。
※2 MSCI 社のMSCI Japan Investable Market Index(IMI)の構成銘柄数は 956 銘柄、FTSE社のJapan All Cap Index の構成銘柄数は1381銘柄(2026年1月末時点)
※3 大和証券レポート「TOPIX定期入替え予想UPDATE」橋本純一(2026年1月16日)
※4 売買インパクトの抑制のために、売買のタイミングを多少前後に分散させるパッシブファンドも一部存在するが、多くはトラッキングエラー抑制のために、リバランス当日に売買を実施するファンドが多い。
※5 上場廃止となった銘柄については、その時点で分析対象から除外して分析
※6 JPX のウェブサイト(https://www.jpx.co.jp/markets/indices/revisions-indices/index.html)
当記事は2026年3月9日に公開された、大和総研の調査本部フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザーである塩村賢史氏のレポートを転載したものです。同氏の公開するレポートは下記リンクから閲覧できます。(大和総研のホームページへ遷移します。)
https://www.dir.co.jp/professionals/researcher/shiomurak.html






