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株は調整、債券は底打ち、円安は継続か——ホルムズ海峡封鎖・米中間選挙が試す市場の耐性

2026年4月10日

関税政策の転換や地政学リスクの高まりなど不確実性の増す世界経済を見通すことは困難を極めている。今後のマクロ経済や市場環境の見通しについて、マーケットコンシェルジュの代表、上野泰也氏に語ってもらった。

※当記事はオルイン セミナー内のセッション内容をもとに再構成したものです。

金融市場の見通し

米国株

一言でいえば、現在は調整局面にあります。FRBの利下げ観測が維持される程度の悪いニュースを求めながら高値圏を推移してきましたが、AIブームの持続性への疑念による不安定化に加え、今回のイラン情勢によって利下げ観測が消えかねないとの懸念も出ています。プライベートクレジットをめぐる問題や、中間選挙でのトランプ氏の敗北懸念も米国株の売り材料となり得ます。期待先行で上昇してきた分の反動も含め、状況によっては急落リスクをはらんだ調整含みの展開と警戒して見ています。

日本株

日経平均株価6万円が一つの目標として語られてきましたが、5万9000円台でUターンし、調整局面に入っています。ただし、年初の大発会の寄り付きが5万1000円程度でしたから、貯金がある状態での相場です。干支の格言「馬尻下がり」が示す通り、全体として下がりやすい傾向にあるという認識です。

需給面では自社株買いや個人マネーの流入により底堅さはありますが、上げ相場しか知らない若い投資家層がどこかでその認識を改めるまでは需給の支えが続きやすく、その点は留意が必要です。

日本国債

地合いは改善しつつあります。日銀の利上げ懸念や積極財政による増発懸念から全面的に逆風が吹いていた時期から、高市首相が利上げにブレーキをかける姿勢を示し始め、物価の実力不足への認識も出てきた中で、地合いが改善してきました。私の見方では10年債2.2%前後で買いが入って押し戻される展開が数週間続いており、また5年債も1.6%超は今後5年間の政策金利平均として過剰に売られすぎと判断しています。不安定な地合いではあるものの、これらのレベルでは購入していけば勝てるのではないかと考えています。

ドル円

日米金利差縮小を背景に、今年はドル安・円高方向という年初に提示したベーシックな見方は変えていません。ただし、新NISAを通じた個人マネーの海外株式投資や、公的年金の海外資産比率の高さといった構造的な円高ブレーキ要因があり、政府が手当てをしなければ円高余地は限られます。年初の段階では145〜160円をコアレンジとして想定しており、150円前後には抵抗力があるとみていました。足元の原油高による貿易収支悪化も円高の余地を狭める要因です。

今後の注目材料

国内:消費税減税の行方

衆院選において与党が消費税減税を公約に掲げて勝利した経緯から、財務省内にも「やらざるを得ない」という声が出てきていましたが、足元では再びやらない方向へと揺り戻している印象です。ただし少なくとも言えることは、サービスCPIが前年比1.4〜1.5%程度での推移にとどまっており、物価の実力として2%を維持することは現状難しいということです。日銀が望むような賃金と物価の好循環メカニズムが定着するとは見ておらず、物価の実力不足はいずれ露呈するだろうと思っています。欧米型の食料・エネルギーを除いたコアインフレでも1%台から抜け出せていない現実がそれを示しています。

国内:上場企業の増益トレンド

上場企業については、2026年3月期で5年連続の増益が見込まれます。日銀短観ベースでは6年連続となれば過去最長です。円安の寄与もありますが、部門ごとの経営資源の集中投下、M&Aや設備投資へ分厚い現預金の戦略的な活用などが少なからず貢献していると思います。

海外:イラン情勢とホルムズ海峡

イランについては、合理的に考えれば最終的には白旗を掲げることになるだろうと見ています。指導部の居所まで特定されて攻撃を受けており、戦力差も歴然としています。イランも守るべき国体を条件として交渉の場を設けることができれば、一定の決着は可能なはずです。ただし現時点ではそこまでの動きは見られず、ホルムズ海峡をめぐる情勢は依然として流動的です。早期決着を前提に申し上げてきた部分もありますが、長期化した場合はWTIが80〜100ドル以上で高止まりし、利下げのさらなる困難をもたらすことになります。

海外:中間選挙とトランプ政権の足元

中間選挙でトランプ大統領が苦しい状況にあるという見方が広がっています。ワイルズ首席補佐官がエネルギー対策を推進しようとしているほか、ベッセント財務長官がロシア産原油の1カ月間の輸入を容認するなど、ガソリン価格引き下げに向けた動きが出ています。負ければ弾劾裁判というシナリオもあり、ドル売り材料・リスクオフの要因として引き続き注視が必要です。

海外:日中関係とウクライナ

日中関係については、中国が軍民両用品の規制を強化してきた点は予想外でした。11月のAPECにあわせた日中首脳会談・関係改善というシナリオはあるものの、それまでの間にどこまで問題が交通整理できるかが課題です。ウクライナの和平協議については、インドによるロシア産原油輸入の容認もあってロシアが一息ついている面があり、戦争はしばらく続きそうです。

マーケットコンシェルジュ 代表 上野泰也 氏