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連載 小倉邦彦の資産運用時事コラム 第35回
「見える化」のこれまでの流れを振り返る
〜加入者のための見える化なるも、パワーユーザーは運用会社、コンサル、メディア?

2026年2月25日
小倉 邦彦 /  『オルイン』シニアフェロー
元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー

はじめに

資産運用立国実現プランの中で確定給付企業年金(DB)改革の一つと位置付けられた「DBの運用等の見える化」は、2025年6月13日に成立した年金法改正により、DBの情報(事業報告及び決算に関する報告書の一部項目)を、一般に公開することが法律で義務付けられた。第三者にも公開することで、他社との比較や分析ができる環境を整えることを目的としている。見える化のあり方については、厚労省の社会保障審議会(企業年金・個人年金部会)で2024年に数回議論され、その方向性が確認された。さらに、2025年10月7日には企業年金連合会やDB関係者も参加する形で、「企業年金の加入者のための運用等の見える化等に関する第1回懇談会」が開催された。

DB関係者からは、「個別名称が分かる形での運用の見える化については現場で不安が強い」、「掛け金相当額/給付総額/掛け金拠出状況は、通常非開示とされる企業の報酬水準の一部であり、開示すべきではない」との意見が表明されたが、それにより厚労省の方針が見直されることはないようだ。2026年1月に開催された第2回懇談会では、DCの投資教育やDBの給付改善に関する取り組み事例が主たる議題となり、見える化に関する議論はほとんどないまま、懇談会は2回で終了ということになった。「見える化に懸念を持つ連合会やDB関係者も交えてしっかり議論した」という既成事実を作るのが目的だったのだろうか。

最終的な開示項目は3月末までに事務局(厚労省)が決定するようであり、開示項目については最終的に厚生労働省令の形で公表される予定である。また、厚労省は2025年11月14日に発出した「確定給付企業年金の事業及び決算に関する報告書の様式及び提出方法の見直しの予定について」で、2027年6月1日以降を決算日とする事業及び決算に関する報告書は、オンライン提出にすると規定した。従って、3月決算のDBでは2027年度分からオンライン提出=開示対象になる。

今回の時事コラムでは、DB関係者の多くが懸念する「運用等の見える化」に関し、これまでの議論を振り返ることで、それが目指す目的や必要性を再確認したい。また、加入者等のステークホルダーに対し情報公開することの意義や重要性は論を待たないが、一般公開することが本当にDBにとって有益で必要なものなのかも検証していきたい。

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小倉 邦彦

 『オルイン』シニアフェロー
元 三井物産連合企業年金基金 シニアアドバイザー

1980年三井物産株式会社入社。本社、広島支店、ドイツ(デュッセルドルフ)等にて経理、財務業務を担当後、1998年~2006年 本店プロジェクト金融部室長。
2006年~2009年 米国三井物産ニューヨーク本店財務課 GM。
2009年~2011年 本店財務部企画室 室長。
2011年~2013年 三井物産フィナンシャルサービス株式会社 代表取締役社長。
2013年~2017年 三井物産都市開発株式会社CFO。
2017年5月~2022年6月 三井物産連合企業年金基金 常務理事兼運用執行理事。
2022年7月~2023年3月 同基金シニアアドバイザー。