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2026年の経済を先読み!「物価高に賃金は追い付くか?」「金利ある世界で意識すべき投資のポイントは?」 第一生命経済研究所・永濱利廣氏に聞く

2026年1月20日
永濱 利廣氏 /  第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト
2025年の金融市場は波乱含みの展開となった。世界経済は米国第2次トランプ政権による保護主義的な通商政策が関税ショックを引き起こし世界を翻弄。国内では日銀が追加利上げを実施し、金融正常化を推進。春闘では2年連続5%台という高い賃上げ率を達成したものの継続的な物価高は消費者生活に色濃く影を落とし続けている。10月には初の女性総理となる高市政権が誕生。株式市場は活況を呈する一方、インフレと金利上昇圧力は継続している。世界株はAI投資に牽引され、国内株は日経平均が史上初の5万円台を突破し過去最高を更新。新NISA投資家にも大きな影響を与えた。2025年の流れを受け、投資家は2026年にどう挑むべきか。世界経済、金融市場の見通しについて第一生命経済研究所首席エコノミスト、永濱利廣氏に聞いた。

「政治主導の市場動揺」と「AIによる成長の二極化」に翻弄

――2025年を振り返って、世界経済および金融市場の主な動き、流れは?

2025年の世界経済は、「政治主導の市場動揺」と「AIによる成長の二極化」に翻弄された一年だった。

1. 米国の「トランプ関税」と市場の乱高下

年初に発足した第2次トランプ政権は、4月に広範な「相互関税」を発動した。これによりサプライチェーンが混乱し、世界的に株価が急落する「関税ショック」が発生。しかし、その後の法人減税や規制緩和への期待から、米国株はS&P500が過去最高値を更新するなど、景気の強さが不確実性を上回る展開となった。

2. 金融政策の転換と円安の持続

米連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレ抑制から景気支援へと軸足を移し、利下げに踏み切った。一方、日銀は緩やかな利上げを継続したが、日米の金利差は依然として大きく、円安基調は解消されなかった。日本の株価は、AIブームや高市政権への期待感から史上初めて5万円台に乗せるなど、歴史的な節目を迎えた。

「トランプ政策」の真価と「日米の金利差縮小」が鍵

――2026年の世界経済の見通しは?

2026年の世界経済は、「トランプ政策の真価」と「日米の実質金利差縮小」が鍵を握る一年となりそうだ。

1. 米国経済:減税の追い風とインフレの再燃リスク

第2次トランプ政権による大規模な法人減税や規制緩和が本格化し、企業活動や個人消費の下支えに期待。一方で、2025年に導入された関税政策の影響や、不法移民排除に伴う人手不足が粘着的なインフレを招く懸念もある。景気は底堅さを保つものの、物価高が消費を抑制する「強弱入り混じる」展開が予想される。

2. FRBの苦悩:利下げは「慎重」へ

FRBは、景気配慮から利下げを進める意向だが、インフレ再燃リスクからペースは年1~2回程度になりそう。また、2026年5月のパウエル議長の任期満了に伴う次期議長人事も、市場の不透明感を強める要因となりそうだ。

3. 日本への影響:円安修正と金利上昇の足音

米国が緩やかな利下げに向かう一方、日本は高市政権下の積極財政と「物価・賃金の好循環」を背景に、日銀が金利を1%程度まで引き上げる可能性が高い。日米の金利差が縮小に向かうことで、長らく続いた記録的な円安傾向が修正され、輸出企業の収益や輸入物価の落ち着きに影響を与える可能性がある。

「物価高に賃金が追いつかない」状況は解消へ

――2026年の日本経済の見通しは?

2026年の日本経済は、長らく続いた「物価高に賃金が追いつかない」状況が解消に向かい、内需主導の緩やかな回復へ転換する節目の年となる見通し。

1. 経済成長と実質賃金のプラス転換

実質GDP成長率は1%弱の推移を予想。最大の注目点は、2026年春闘でも「5%水準」の賃上げが維持され、消費者物価指数の伸びが2%を下回ることで、実質賃金が安定的にプラスとなること。これにより家計の購買力が回復し、個人消費が景気をけん引する「好循環」が現実味を帯びる。

2. 高市政権の「責任ある積極財政」

2025年に発足した高市政権が、危機管理投資や減税を含む「責任ある積極財政」を本格化させる。この財政拡大は景気を下支えする一方、長期金利の押し上げ要因にもなる。市場は「財政規律と成長」のバランスを注視しており、国債市場の信認維持が株価や円相場の安定に不可欠となる。

3. 追加利上げと金融市場の正常化

日銀は、賃金と物価の好循環を確認し、政策金利を1.0%程度まで段階的に引き上げる公算が大きい。

為替:FRBの利下げと相まって日米実質金利差が縮小し、1ドル=140円台に向けた円安修正が進むと見られる。

メインシナリオは緩やかな円高、リスクシナリオは再インフレと「悪い円安」

――2026年のマーケット展望は?

2026年のマーケットは、米国の「高金利・インフレ」の行方と、主要国間での「政策の乖離」が最大の焦点だ。

1. メインシナリオ:緩やかな円高

世界経済が底堅さを保つ中、日米の実質金利差縮小が緩やかに進むシナリオ。

金利:FRBはインフレの粘着性を警戒しつつ、年1〜2回程度の利下げに留め、政策金利を3%台後半で維持。一方、日銀は1.0%程度まで追加利上げを行い、日米の実質金利差は徐々に縮小。

為替:実質金利差縮小を背景に、ドル円は1ドル=140円台へと円安修正が進む。ただし、米国の景気が強ければドル買い圧力も根強く、急速な円高には至らない。

2. リスクシナリオ:再インフレと「悪い円安」

トランプ政権の関税や移民抑制がインフレを再燃させるシナリオ。

米国の「ノーランディング」:物価が再び上昇し、FRBが利下げ停止や再利上げを迫られる場合、米長期金利が5%を突破。ドル円は再び160円を超える円安に振れるリスクがある。

地政学・財政リスク: 中東や東アジアの緊張、あるいは各国の巨額の財政赤字が嫌気され、金利が急騰する事態にも警戒が必要。

投資初心者も経験者も意識したい3つのポイントとは

――2026年に投資家が意識すべき点、注意すべき点は?

2026年の投資環境は2025年までの「政治による激動」が落ち着きを見せる一方、金利や物価の「新常態」へ適応するステージに入る。初心者から経験者まで、以下の3点を意識することが重要。

1. 「金利のある世界」での資産再配分

日本では日銀の利上げにより、預金や債券の魅力が数十年ぶりに復活。一方、米国は利下げ局面だが、インフレ再燃リスクから下げ幅は限定的との見方が有力。

注意点:過去10年の「超低金利」を前提とした投資手法はリスクが高まる。預貯金・債券・株式のバランスの再確認。

2. 為替の転換点と「時間分散」

日米金利差の縮小により、長年の円安基調が修正される可能性。

戦略:円高は外貨資産の目減り要因となるが、一度に売買せず「積立投資」を継続することで、為替変動リスクを平準化するのが賢明。

3. 2026年の注目指標・イベント

春闘(3月):実質賃金がプラスに定着するか。日本経済の自律回復の試金石。

FRB議長人事(5月):パウエル議長の任期満了に伴う後任人事は、米国の金融政策の継続性に大きな影響を与える。

米中間選挙(11月):トランプ政権の信任投票となり、政策の推進力が左右される。

永濱 利廣氏

 第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト

早稲田大学理工学部工業経営学科卒、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年4月より現職。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。内閣府経済財政諮問会議議員、景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員、跡見学園女子大学非常勤講師などを務める。景気循環学会中原奨励賞受賞。著書に『図解 社会人の基本 お金のしくみがわかるおとな事典―金融・経済「超」入門―』(監修・講談社)、『お金と経済―日本の生産性を高める仕組みと法則―』(生産性出版)、『新型インフレ―日本経済を蝕む「デフレ後遺症」―』(朝日新聞出版社)など多数。